親が経営していた賃貸アパートを相続した場合、入居者との契約は自動的に相続人へ引き継がれます。契約を結び直す必要はありませんが、放っておくと家賃が亡くなった人の口座に振り込まれ続け、入居者も誰に連絡すべきか分からない状態になります。この記事では承継の手続きを順に整理します。
契約は相続人に引き継がれる
賃貸借契約における貸主の地位は、相続によって相続人に承継されます。入居者の承諾は不要で、契約期間や家賃などの条件もそのままです。敷金を返す義務も貸主の地位と一体で引き継がれるため、退去時には相続人が返還します。相続税の計算では、預かっている敷金は被相続人の債務として債務控除の対象になります。
入居者への通知
遺産分割が決まる前でも、相続人の代表者から次の内容を書面で通知するのが一般的です。
- 貸主が亡くなったことと、契約はそのまま継続すること
- 当面の連絡先(相続人代表または管理会社)
- 家賃の振込先の変更(亡くなった人の口座は凍結されるため)
振込先は、遺産分割が終わるまでは相続人代表の専用口座にして入出金を記録しておくと、後の精算が楽になります。取得者が決まったら、改めて新しい貸主名と振込先を通知します。
管理委託契約や家賃保証会社との契約は、承継の届出や契約者変更の手続きが必要です。火災保険・施設賠償責任保険も契約者を変更します。管理会社に事情を伝えれば、入居者への通知文の作成まで代行してくれることが多いので、まず管理会社に連絡するのが近道です。
家賃の帰属と確定申告
亡くなった日までの家賃は被相続人の所得として準確定申告(4か月以内)の対象です。亡くなった日の翌日から遺産分割が決まるまでの家賃は、法定相続分に応じて各相続人の不動産所得になります。遺産分割で取得者が決まった後は、その人の所得です。青色申告を続けるには、相続人が新たに承認申請書を出す必要があり、期限が短いので注意してください。
遅れやすい手続き
家賃収入がある不動産は、相続税評価(貸家建付地・貸家の減額、貸付事業用宅地等の特例)と所得税の両方に関わります。入居者の状況や契約内容を整理した資料は申告にも使うので、承継手続きと並行して契約書・レントロール・修繕履歴をまとめておきましょう。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。