「使っていない共有持分を手放したい」というとき、民法上は共有持分を放棄することができ、放棄した持分は他の共有者に割合に応じて帰属します(民法255条)。ただし、税金はゼロではありません。放棄・無償譲渡・有償譲渡のどれを選ぶかで、課税される人と税目が変わります。
3つの方法と税金の違い
| 方法 | 持分を受け取る人の税金 | 手放す人の税金 |
|---|---|---|
| 持分の放棄 | 贈与税(みなし贈与) | なし |
| 無償で譲渡(贈与) | 贈与税 | なし |
| 有償で譲渡(売買) | 不動産取得税・登録免許税 | 譲渡所得税 |
持分放棄は一方的な意思表示で成立し、相手の承諾も契約も要りませんが、相続税法では放棄によって利益を受けた共有者が持分を贈与されたものとみなして贈与税の対象にします。贈与の年の1月1日から12月31日までに受けた他の贈与と合計し、110万円を超える部分に課税されます。
例:相続税評価額1,800万円の土地の3分の1の持分(600万円)を放棄し、他の共有者1人に帰属した場合 贈与税の課税価格=600万円−110万円=490万円 兄弟間(一般税率)なら、490万円×30%−65万円=82万円
放棄の登記は単独ではできない
持分放棄そのものは単独でできますが、登記は「持分放棄」を原因とする移転登記を、放棄した人と受け取る人が共同で申請します。受け取る側が協力しない場合は、登記を求める裁判が必要になります。登録免許税は固定資産税評価額の2%(土地は軽減措置の期間中1.5%)で、相続登記の0.4%より高くなります。
相続人間なら遺産分割で解消する
相続で共有になった直後であれば、持分放棄ではなく、遺産分割の段階で一人に集める方法を検討します。相続登記をまだしていなければ、協議書で取得者を一人に決めるだけで贈与税はかかりません。すでに法定相続分で共有登記をしている場合は、遺産分割を原因とする更正の登記や持分移転登記で対応できることがあり、この場合も遺産分割の範囲内なら贈与にはなりません。
判断のポイント
持分放棄は「手放す側に税金がかからない」点が魅力ですが、受け取る側に贈与税がかかり、しかも相手の協力なしでは登記が終わりません。評価額が110万円以下の小さな持分なら放棄や贈与で十分ですが、金額が大きいなら、時価で売買して受け取る側の贈与税を避ける、あるいは相続土地国庫帰属制度(共有者全員での申請が必要)を含めて比較することをおすすめします。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。