住宅ローンが残っているマンションを子に贈与し、ローンも引き継いでもらう。このような「負担付贈与」は、通常の贈与と評価の基準が異なります。相続税評価額ではなく通常の取引価額(時価)で評価されるため、想定より贈与税が高くなり、さらに贈与者側に譲渡所得税もかかります。
負担付贈与の評価は時価
通常、不動産の贈与は路線価や固定資産税評価額による相続税評価額(時価の7〜8割程度)で評価します。しかし土地や建物を負担付贈与した場合は、贈与時の通常の取引価額(実勢価格)から負担額を差し引いた金額が贈与税の課税価格になります。負担が大きいと評価が低くなりすぎて課税のバランスを欠くため、このような取扱いになっています。
例:時価5,000万円・相続税評価額3,500万円のマンションを、ローン残高3,000万円付きで子に贈与
- 誤った計算: 3,500万円−3,000万円=500万円
- 正しい計算: 5,000万円−3,000万円=2,000万円
贈与税(特例税率)は (2,000万円−110万円)×45%−265万円=585万5,000円です。
贈与者には譲渡所得税
負担付贈与では、贈与者は負担額(ローン残高)で不動産を売ったものとして扱われます。負担額が取得費を上回れば譲渡所得が発生します。
例:取得費2,000万円の物件を、ローン残高3,000万円付きで贈与 譲渡所得 3,000万円−2,000万円=1,000万円 → 所得税・住民税の対象 取得費が負担額を上回る場合、個人間の取引では譲渡損失はなかったものとされます。
現金や上場株式の負担付贈与
負担付贈与の時価評価は土地・建物(およびこれらに関する権利)に限られます。現金や上場株式を負担付きで贈与する場合は、通常の評価額から負担額を引きます。
実務上の対応
- ローンの引継ぎには金融機関の承諾が必要で、子の返済能力が審査されます
- ローン付きで渡すより、親がローンを完済してから贈与する、または相続まで待つ方が税負担が軽いことが多いです
- 扶養や介護などの役務を負担とする贈与も負担付贈与ですが、負担の評価は個別判断になります
不動産の贈与は、通常の贈与・負担付贈与・売買で税額が大きく変わります。実行前に時価と相続税評価額の両方を確認してください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。