中小企業では、会社を契約者・受取人、社長を被保険者とする**法人契約の生命保険(経営者保険)**に加入していることがよくあります。社長が亡くなると保険金は会社に入り、会社はそれを原資に遺族へ死亡退職金や弔慰金を支給します。この流れには会社側と遺族側の両方で税金の論点があります。
会社側:保険金は益金、退職金は損金
会社が受け取った死亡保険金は、それまで資産計上していた保険料積立分を取り崩した差額が法人の益金(利益)になります。一方で、遺族に支給する死亡退職金は、適正な額であれば損金になります。保険金の益金と退職金の損金がほぼ同じ事業年度に計上されれば、法人税の負担を抑えつつ、遺族に資金を渡せます。
適正額の目安としてよく使われるのが功績倍率法です。
退職金の目安 = 最終報酬月額 × 在任年数 × 功績倍率
たとえば最終報酬月額100万円、在任年数30年、功績倍率3.0なら9,000万円です。功績倍率は役職や同業他社の水準で判断されるため、極端に高い倍率は過大退職金として損金を否認されるおそれがあります。
遺族側:退職金と弔慰金の非課税枠
遺族が受け取る死亡退職金は、相続税では「退職手当金等」として500万円×法定相続人の数まで非課税です。弔慰金は別枠で、業務外の死亡なら普通給与の6か月分、業務上の死亡なら36か月分まで相続税の対象外になります。
たとえば法定相続人3人、退職金9,000万円、弔慰金600万円(月額100万円×6か月)なら、弔慰金600万円は非課税、退職金は1,500万円を引いた7,500万円が課税対象です。
自社株評価と納税資金への影響
社長の相続では自社株も相続財産です。会社が受け取った保険金は純資産を増やして株価を押し上げますが、支給した退職金は負債として差し引かれるため、保険金と退職金の額のバランスで株価が動きます。また、退職金は遺族の納税資金や、後継者以外の相続人への代償金に充てやすく、事業承継の設計と一体で考える論点です。
保険金の受取から退職金の支給決議、相続税申告までの段取りは、株主総会の議事録や退職金規程の整備を含めて事前に準備しておくと慌てずに済みます。経営者の相続は財産の種類が多いため、早めに無料相談をご利用ください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。