一棟の賃貸マンション・アパートの相続税評価|空室がある場合の賃貸割合の考え方

一棟所有の賃貸マンション・アパートは、建物は固定資産税評価額から借家権割合30%、敷地は貸家建付地として減額します。減額は賃貸割合に応じて計算され、空室は原則として除かれますが、一時的な空室は賃貸中として扱える場合があります。

賃貸アパートや一棟の賃貸マンションを所有していた方の相続では、建物と敷地の両方で減額があります。ただし、減額の割合は「賃貸割合」によって変わるため、亡くなった時点で空室があると、その分だけ減額が小さくなります。空室の扱いが評価額を左右する重要なポイントです。

建物と敷地の評価式

建物

貸家の評価額 = 固定資産税評価額 × (1 − 借家権割合30% × 賃貸割合)

全室が賃貸中(賃貸割合100%)なら、固定資産税評価額の70%です。

敷地(貸家建付地)

貸家建付地の評価額 = 自用地評価額 × (1 − 借地権割合 × 借家権割合30% × 賃貸割合)

借地権割合60%の地域で全室賃貸中なら、1 − 0.6 × 0.3 × 1.0 = 0.82 で、自用地評価額の82%です。

賃貸割合

賃貸割合 = 課税時期に賃貸されている各独立部分の床面積の合計 ÷ 各独立部分の床面積の合計

戸数ではなく床面積で計算します。全10室が同じ床面積で2室が空室なら、賃貸割合は80%です。

空室の扱い

亡くなった日に空室だった部屋は、原則として賃貸割合の分子に含めません。ただし、次のような事情がそろう「一時的な空室」は、賃貸中として扱うことが認められています。

  • 各独立部分が課税時期の前後を通じて継続的に賃貸の用に供されていた
  • 賃借人の退去後すぐに新しい入居者の募集を行っていた
  • 空室の期間中、他の用途(自分で使うなど)に使っていない
  • 空室期間が課税時期の前後1か月程度などの一時的な期間である
  • 課税時期後の賃貸が一時的なものでない

空室期間が数か月から1年以上に及ぶ場合は、募集をしていても賃貸中とは認められにくいのが実情です。

計算例

固定資産税評価額6,000万円の建物(全10室・同じ床面積・空室2室、うち1室は退去から2週間で募集中)、自用地評価額1億円の敷地、借地権割合60%の場合。

一時的な空室1室を賃貸中として扱えるとすると、賃貸割合は9室 ÷ 10室 = 90%です。

  • 建物:6,000万円 × (1 − 0.3 × 0.9)= 6,000万円 × 0.73 = 4,380万円
  • 敷地:1億円 × (1 − 0.6 × 0.3 × 0.9)= 1億円 × 0.838 = 8,380万円

空室2室とも除いた場合(賃貸割合80%)は建物4,560万円・敷地8,560万円となり、合計で360万円の差が出ます。

実務上の対応

空室を一時的と主張するには、退去日・募集開始日・募集広告・その後の入居日が分かる資料(管理会社の記録など)が必要です。また、小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)も賃貸割合に応じて対象面積が変わります。一棟物件の評価は資料集めが肝心ですので、管理会社に早めに連絡してレントロール(賃貸状況の一覧)を取り寄せてください。

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。

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