非上場株式の相続税評価は、会社の業績や純資産をもとに計算されるため、計算の元になる数字を適正な範囲で動かせば評価額は下がります。ただし、評価を下げること自体が目的の取引は否認のリスクがあり、効果が一時的なものも多いです。この記事では、代表的な方法とその限界を整理します。
株価の計算の仕組みを押さえる
同族株主が相続する自社株は、会社の規模に応じて次の方式で評価します。
- 類似業種比準方式:上場している同業種の株価を基準に、自社の「配当・利益・純資産」の3要素で比準する(大会社はこの方式が中心)
- 純資産価額方式:会社の資産を相続税評価額で評価し直し、負債を引いた純資産を株式数で割る(小会社はこの方式が中心)
- 中会社は両方式を一定の割合で併用
つまり、利益・配当・純資産のいずれかを下げれば株価は下がります。どの要素が効くかは会社の規模区分によって異なります。
代表的な4つの方法
1. 役員退職金の支給 先代の退任時に適正な退職金を支給すると、その期の利益が減り、純資産も減ります。もっとも使われる方法です。例えば、純資産5億円、年間利益5,000万円の会社が1億円の退職金を支給すると、純資産は4億円、その期の利益は赤字になり、類似業種比準方式の利益要素がゼロに近づきます。ただし効果は退職金を支給した期の後の限られた期間であり、「功績倍率法」で説明できる適正額を超えると損金として認められません。
2. 配当の見直し 類似業種比準方式の配当要素は、直前2年間の平均配当で計算します。記念配当などの非経常的な配当は除かれるため、普通配当を抑えることで株価が下がります。
3. 不良資産の処分 回収不能な貸付金や売れない在庫、価値のない関係会社株式を処分して損失を計上すると、利益と純資産が減ります。本来あるべき処理を適時に行うものなので、否認のリスクが低い方法です。
4. 含み損の実現 時価が取得価額を下回っている不動産や有価証券を売却して損失を出す方法です。グループ会社間の売買は価格の妥当性が問われるため、第三者への売却が基本です。
注意点とよくある誤解
- 株価対策は**評価時点(贈与や相続の時)**の数字で決まるため、効果の出る時期と株式を移す時期を合わせる必要があります
- 取得から3年以内の不動産は通常の取引価額で評価されるため、不動産の購入は短期では効きません
- 評価を下げるためだけの不自然な取引は、税務調査で否認されたり、評価そのものが否定されたりするリスクがあります
株価対策は事業承継の計画全体の中で、時期と方法を組み合わせて考えるものです。現状の株価を把握することから始めてみてください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。