経営者の相続で「会社のお金」と「個人のお金」が混ざっているときの整理|名義・貸付・立替をどう分ける?

経営者の相続では、会社と個人のお金の流れが混ざっていることがよくあります。相続財産は名義ではなく実質で判断されるため、帳簿と通帳を突き合わせて貸付金・立替金・仮払金を確定する手順と、調査で指摘されやすい点を解説します。

中小企業の経営者は、会社と自分の財布を厳密に分けていないことが少なくありません。資金繰りが苦しいときに個人の預金を会社の口座に入れたり、会社の口座から自宅のリフォーム代を払ったりといった動きが長年積み重なると、相続のときに「どこまでが相続財産か」が分からなくなります。この記事では、混ざったお金を整理する手順を解説します。

相続財産は「実質」で判断される

相続税では、財産の帰属は名義ではなく実質で判断されます。会社の口座にある預金でも、実質的に社長個人のお金が預けられているだけなら相続財産になりえますし、逆に社長名義の口座でも会社の売上が入っているだけなら会社の財産です。

典型的なパターンを整理すると次のようになります。

状況 相続税での扱い
個人の預金を会社に入れた(返す約束あり) 会社への貸付金として相続財産
個人の預金を会社に入れた(返す約束なし・資本扱い) 出資として株式の評価に反映
会社の口座から個人の支出を払った 会社から社長への貸付金(相続債務)または役員賞与
社長が会社の経費を個人の口座から払った 立替金として相続財産
会社の売上が社長の個人口座に入っている 会社の財産(社長の預り金として相続債務)

整理の手順

  1. 会社の決算書と総勘定元帳を確認する:「役員借入金」「役員貸付金」「仮払金」「仮受金」「立替金」の相続開始日時点の残高を把握します
  2. 社長個人の通帳を遡って確認する:相続開始前5年から10年程度の入出金のうち、会社との間の動きを抜き出します
  3. 両者を突き合わせる:会社の帳簿に載っていない個人からの入金や、個人の通帳にない会社からの出金があれば、その性質を確認します
  4. 残高を確定する:貸付金は相続財産、借入金は相続債務として計上し、根拠となる資料(帳簿の写し、通帳の写し、契約書)を揃えます

帳簿に「仮払金」として長年残っている金額は、実際には社長が個人的に使ったお金であることが多く、会社から社長への貸付金(相続債務)として扱うか、過去の役員賞与として所得税の問題になるかを検討する必要があります。

税務調査で指摘されやすい点

相続税の税務調査では、会社の帳簿と社長個人の通帳の両方が確認されます。特に次のような点は指摘されやすい項目です。

  • 会社の帳簿上の役員借入金の残高が、相続税の申告で貸付金として計上されていない
  • 相続開始の直前に、会社の口座から社長の口座へ、またはその逆に大きな資金移動がある
  • 家族名義の口座に会社から役員報酬以外の入金があり、実質的に社長の財産とみられる
  • 会社の経費として処理されている支出が、社長の個人的な支出(自宅の修繕、家族の旅行など)である

生前の整理が最善

混ざったお金の整理は、相続が起きてからでは資料が集まらず、相続人も経緯を知らないことが多いものです。生前に、会社と個人の間の残高を毎年の決算で確認し、貸し借りは契約書を作り、個人的な支出は役員報酬から払う形に改めておくことで、相続税の申告も調査対応も格段に楽になります。

会社と個人の資金の整理は、相続税の専門家と会社の顧問税理士が連携して進めるのが効果的です。気になる点があれば無料相談をご利用ください。

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。

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