事業をやめて会社を清算すると、会社の財産は負債を返した後に株主へ分配されます。この分配金には「みなし配当」という独特の税金がかかり、相続との組み合わせで税額が大きく変わります。この記事では、清算の流れと税金の仕組み、清算中に相続が起きた場合の評価を解説します。
清算の流れと会社側の税金
- 株主総会で解散を決議し、清算人を選任して解散の登記をする
- 債権者に対する公告(2か月以上)を行い、債権の取立てと債務の弁済を進める
- 資産を売却して現金化し、負債を返す
- 残った財産(残余財産)を株主に分配する
- 清算結了の登記をする
清算中も法人税の申告は必要で、資産の売却益には法人税がかかります。含み益のある不動産を持つ会社では、売却時の法人税で残余財産が大きく減ることがあります。
みなし配当の計算
残余財産の分配のうち、会社の「資本金等の額」に対応する部分は出資の払戻しで、それを超える部分がみなし配当です。
みなし配当 = 分配額 − 資本金等の額 × 持株割合
例えば、資本金等の額1,000万円、残余財産6,000万円の会社の株式を100%持つ株主なら、みなし配当は6,000万円 − 1,000万円 = 5,000万円です。これは配当所得として総合課税され、給与などと合算して最高55%(所得税・住民税)の税率がかかります。配当控除は受けられますが、金額が大きいと税率は高くなります。
一方、分配額のうち資本金等の額に相当する部分(1,000万円)と株式の取得費との差額は、株式の譲渡損益として分離課税(20.315%)の対象です。
清算中に株主が亡くなった場合の評価
清算中の会社の株式は、通常の類似業種比準方式や純資産価額方式ではなく、「分配を受けると見込まれる金額」をもとに評価します。分配までの期間に応じて一定の利率で割り引いた現在価値で評価するとされています。分配見込額の計算では、清算に伴う法人税も考慮します。
相続の前と後、どちらで清算するか
| タイミング | 税金の流れ |
|---|---|
| 相続前に清算 | 社長にみなし配当課税 → 残った現金に相続税 |
| 相続後に清算 | 自社株に相続税 → 相続人にみなし配当課税 |
相続後に清算する場合、株式の譲渡損益の計算では相続税の取得費加算を検討できます。
相続前の清算は、社長が役員退職金を受け取って純資産を減らしてから行うと、みなし配当を抑えられます。退職所得は税負担が軽いため、退職金と清算分配の組み合わせが手取りを左右します。
清算は一度始めると元に戻せません。M&Aによる売却と比較したうえで、相続税と所得税の両方を見通した計画を立ててから着手してください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。