個人事業を相続したときの消費税の納税義務|被相続人の課税売上を引き継いで判定する仕組み

個人事業を相続した年は、相続人自身の2年前の売上が1,000万円以下でも、被相続人の課税売上高で消費税の納税義務を判定します。相続した年と翌年・翌々年で判定方法が異なり、簡易課税やインボイス登録も引き継げないため注意点を解説します。

消費税は、原則として2年前(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超えると納税義務が生じます。相続人が新たに事業を始めたばかりなら2年前の売上はゼロのはずですが、個人事業を相続した場合には「被相続人の売上」を使って判定する特例があります。この判定を忘れると、無申告のまま数年が経ってから指摘を受けることになりかねません。

相続があった年の判定

相続人が事業を引き継いだ年は、次の2段階で判定します。

  1. まず相続人自身の基準期間の課税売上高で判定する(1,000万円超なら課税事業者)
  2. 相続人が免税事業者なら、被相続人の基準期間の課税売上高が1,000万円を超えているかで判定する。超えていれば、相続があった日の翌日からその年の末日までは課税事業者になる

例えば、父が2024年に課税売上高1,500万円の事業を営んでおり、2026年6月に亡くなった場合、2026年の基準期間(2024年)の父の売上が1,000万円を超えているので、相続人は2026年6月の翌日から12月31日まで消費税の納税義務者になります。それより前の期間(1月〜6月)は免税のままです。

相続があった翌年・翌々年の判定

相続があった年の翌年と翌々年は、「相続人の基準期間の課税売上高 + 被相続人の基準期間の課税売上高」の合計が1,000万円を超えるかで判定します。

年 判定に使う売上
相続した年 被相続人の基準期間の売上(相続後の期間のみ課税)
翌年・翌々年 相続人の売上 + 被相続人の売上の合計
その後 相続人自身の基準期間の売上のみ

相続人が以前から別の事業を営んでいた場合は、どちらも1,000万円以下でも合計で超えることがあります。

届出や登録は引き継げない

見落としやすいのが、被相続人が出していた届出や登録の効力です。

  • 簡易課税制度選択届出書:相続人には引き継がれません。簡易課税を使いたければ、相続人が改めて提出します。相続があった年は、その年の末日までに提出すれば同じ年から適用できる取扱いがあります
  • インボイス(適格請求書発行事業者)の登録:登録番号は被相続人固有のもので、相続人は自分で登録申請が必要です。死亡届出書の提出から一定期間は被相続人の番号を使える「みなし登録期間」が設けられています
  • 課税事業者選択届出書:同様に引き継がれません

取引先の仕入税額控除に影響しないよう、みなし登録期間の間に登録を済ませることが実務上は重要です。

消費税の判定を誤ると、本税に加えて無申告加算税や延滞税が生じます。事業を引き継ぐ方は、相続税の申告と並行して消費税の判定と届出を済ませておきましょう。最新の取扱いは税務署や税理士にご確認ください。

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。

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