許認可が必要な事業では、事業主が亡くなった瞬間に「営業できるかどうか」が問題になります。相続税の計算や遺産分割以前に、許可が失効して営業が止まれば事業の価値そのものが失われるためです。この記事では、個人事業と法人で何が違うのか、主な業種の取扱いと空白を防ぐ方法を整理します。
個人事業の許認可は原則として承継できない
個人に与えられた許認可は、その人の資格や適格性に基づいて出されているため、死亡によって効力を失うのが原則です。相続人が事業を続けるには、自分の名前で改めて許可を取得する必要があります。
| 業種 | 個人事業での取扱い | 必要な資格者 |
|---|---|---|
| 薬局 | 開設許可は失効。相続人が新規に開設許可を申請 | 管理薬剤師 |
| 歯科・診療所 | 開設者が変わるため新たに開設届。保険医療機関の指定も取り直し | 医師・歯科医師 |
| 建設業 | 相続人が30日以内に認可を申請すれば許可を承継できる制度あり(2020年改正) | 経営業務の管理責任者・専任技術者 |
| 飲食店 | 相続による地位の承継届で営業許可を引き継げる | 食品衛生責任者 |
| 旅館・理美容など | 業法ごとに承継届の制度の有無が異なる | 業種ごとに異なる |
建設業や飲食店のように、法改正で「相続による承継」が認められた業種もあります。一方、薬局や診療所は新規の手続きが必要で、保険調剤や保険診療の指定には審査期間があるため、営業再開まで空白が生じやすい分野です。事前に保健所や厚生局に相談し、空白なく引き継げる取扱いが可能か確認しておくことが重要です。
法人なら許可は会社に残る
法人で事業を営んでいれば、許認可は会社に対して出されているため、代表者が亡くなっても許可そのものは失われません。必要なのは、代表者や管理者の変更届です。
ただし、亡くなった代表者が「管理薬剤師」「経営業務の管理責任者」「専任技術者」などの資格要件を一人で担っていた場合は、要件を満たす後任を速やかに置かなければ、許可の取消しや営業停止の対象になります。社内に有資格者がいない事業は、法人であっても実質的に承継が難しいのです。
相続税との関係
特定事業用宅地等(400㎡まで80%減額)は、相続人が申告期限まで事業を継続することが要件です。許可の取り直しで営業が止まる期間が長引くと、要件を満たさないと判断されるおそれがあります。また、個人事業では営業権(のれん)が相続財産として評価される場合があります。
空白を防ぐための準備
- 事業に必要な許認可と、それを支える資格者を一覧にする
- 後継者に資格を取らせる、または資格者を雇用して管理者に据える
- 個人事業なら法人化を検討する(許可が法人に帰属し、承継が容易になる)
- 業法ごとの承継制度の有無を、監督官庁に事前に確認する
法人化や資格者の確保は時間がかかるため、早めに手を打つことをおすすめします。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。