事業承継の方法として「持株会社(ホールディングス)」という言葉を耳にする方は多いと思います。会社の上にもう一つ会社を作り、後継者がその会社を通じて事業会社を支配する仕組みです。相続税対策として万能のように語られることもありますが、効果と限界を正しく理解しておく必要があります。
代表的な2つの方式
1. 後継者の持株会社が株式を買い取る方式
後継者が新会社を設立し、その会社が金融機関から借り入れて、先代が持つ事業会社の株式を買い取ります。先代は株式を現金に換え、後継者の会社は事業会社からの配当で借入金を返済していきます。
- 先代:株式の譲渡所得として約20%の税金(相続税よりも低い税率になることが多い)
- 後継者:自己資金はほぼ不要。ただし借入の返済原資は事業会社の配当
- 相続財産:先代の財産は「株式」から「現金」に変わる。現金は評価が下がらないため、売却代金をどう使うかが次の課題
2. 株式移転で持株会社を作る方式
事業会社の株主(先代)が、株式移転という組織再編の手続きで新たな親会社を作り、先代は親会社の株式を持つ形になります。税制適格の要件を満たせば譲渡課税なしで組み替えられます。その後、親会社の株式を後継者に贈与や相続で移します。
相続税対策としての効果と限界
持株会社の株式を純資産価額方式で評価する場合、持株会社が持つ事業会社の株式の含み益(評価額と帳簿価額の差)について、法人税相当額として37%の控除が認められています。事業会社の株価が将来上昇しても、持株会社の株価はその上昇分の63%程度しか反映されないため、株価の上昇を抑える効果があります。
ただし、次の点に注意が必要です。
| 注意点 | 内容 |
|---|---|
| 株式保有特定会社 | 持株会社の資産の50%以上が株式だと、原則として純資産価額方式で評価され、類似業種比準方式が使えず株価が高くなりやすい |
| 設立3年以内の資産 | 持株会社が取得した不動産などは3年間通常の取引価額で評価 |
| 借入の返済 | 配当には事業会社の利益が必要。配当の原資が足りないと返済が滞る |
| 租税回避の指摘 | 承継の目的や事業の実態がなく、評価を下げるためだけの組織再編は否認のリスク |
向いているケース・向かないケース
持株会社方式は、事業会社の利益が安定していて配当余力があり、後継者が決まっている会社に向いています。一方、利益が少ない会社では借入の返済が難しく、資金繰りを圧迫します。また、先代が受け取った現金が相続財産として残るため、持株会社だけで相続税が減るわけではありません。退職金や不動産など他の対策と組み合わせることが前提です。
複数の事業会社をグループとして整理したい、後継者以外の相続人に株式を分散させたくないといった経営上の目的がある場合には、相続税の効果と合わせて検討する価値があります。設計には法務・税務の両面からの検討が必要なため、専門家と相談しながら進めてください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。