事業承継では「株式は後継者に集中させたいが、他の子にも公平に財産を渡したい」というジレンマがよく生じます。種類株式は、株式に付く権利(議決権・配当・拒否権など)を株式の種類ごとに変えられる仕組みで、このジレンマを和らげる道具になります。この記事では、代表的な2種類の使い方と相続税の評価を解説します。
無議決権株式:財産は分けて、経営は集める
無議決権株式は、株主総会での議決権がない代わりに、配当を優先的に受け取れるなどの条件を付けた株式です。事業承継では次のように使います。
- 後継者には議決権のある普通株式を渡し、経営権を集中させる
- 後継者以外の子には配当優先の無議決権株式を渡し、財産的な公平を保つ
- 無議決権株式には、会社が一定の価格で買い取れる取得条項を付けておくこともできる
例えば、発行済株式1,000株のうち、600株を無議決権株式に変更し、普通株式400株を長男に、無議決権株式600株を長女と次男に300株ずつ相続させれば、長男は議決権の100%を持ちつつ、財産の価額では3人がほぼ均等になります。
既存の普通株式を無議決権株式に変えるには、定款変更の特別決議と、不利益を受ける株主の種類株主総会の決議などが必要です。
拒否権付株式(黄金株):先代が最後の歯止めを持つ
拒否権付株式は、特定の事項(取締役の選任、合併、重要な財産の処分など)について、その株式を持つ株主の承認がなければ決議できないという権利を付けた株式です。1株だけでも効力があるため「黄金株」と呼ばれます。
先代が株式の大半を後継者に移した後も、黄金株を1株持ち続けることで、後継者が独断で会社を売却するといった事態に歯止めをかけられます。ただし、次の点に注意が必要です。
- 先代が亡くなると黄金株も相続される。後継者以外が相続すると経営の妨げになるため、遺言で後継者に渡すか、取得条項で会社が取得できるようにしておく
- 先代が認知症になると黄金株の権利行使ができず、会社の重要事項が決められなくなる
- 事業承継税制(納税猶予)では、後継者以外が黄金株を持っていると適用できないとされている
相続税評価
種類株式の相続税評価は、原則として普通株式と同じ方法で行います。ただし、次の取扱いが示されています。
| 種類 | 評価 |
|---|---|
| 無議決権株式 | 原則は普通株式と同じ。同族株主が相続する場合、一定の条件で5%減額し、その分を議決権株式に加算する選択が可能 |
| 配当優先株式 | 類似業種比準方式では、優先配当の額を反映して配当要素を計算 |
| 拒否権付株式 | 普通株式と同じ(拒否権を考慮しない) |
| 社債類似株式 | 一定の要件を満たすものは社債に準じて評価 |
無議決権株式の5%減額は、相続人全員がその選択に同意し、申告書に明記することが条件です。議決権のない株式でも評価が大きく下がるわけではない点は、設計の前提として押さえておきましょう。
設計の注意点
種類株式は定款の変更と登記が必要で、将来の株主間の関係にも影響します。後継者以外の相続人が「配当はあるが議決権のない株式」を納得して受け取るか、配当を継続できる業績があるかを含め、家族の理解を得ながら設計することが大切です。遺留分への配慮と合わせて、無料相談で設計の方向性をご相談ください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。