ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産は、現金や株式と同じく相続税の課税対象です。「見つけにくいから申告しなくてよい」ということはなく、取引所は税務署からの照会に応じますし、被相続人の銀行口座の入出金履歴から取引所の利用が判明することも多くあります。本記事では評価・手続き・引き出せない場合の考え方を整理します。
相続税評価の方法
国税庁の取り扱いでは、活発な市場がある暗号資産は、相続開始日における取引所の取引価格で評価します。被相続人が利用していた取引所の価格を使うのが基本で、複数の取引所で価格が異なる場合はそのうちの一つを合理的に選びます。
例:ビットコイン 0.5BTC、相続開始日の取引価格 1BTC=1,200万円 評価額 = 0.5 × 1,200万円 = 600万円
国内取引所であれば、相続開始日時点の残高証明書を発行してもらえます。価格変動が大きいため、申告書には評価の根拠(取引所名と価格の記録)を残しておきます。市場が存在しないトークンは、売買実例や精通者意見などで個別に評価します。
取引所の相続手続き
国内の取引所では、相続人からの連絡を受けて口座を凍結し、戸籍や遺産分割協議書の提出後に手続きが進みます。多くの取引所は暗号資産のまま相続人の口座へ移すのではなく、取引所が売却して日本円で相続人の銀行口座に送金する方式を採っています。手続き中の価格変動で、評価額と実際の受取額に差が出ることは避けられません。
海外取引所は日本の書類をそのまま受け付けないことが多く、英訳や現地の相続証明が必要になり、対応してもらえない例もあります。
秘密鍵が分からない場合
ハードウェアウォレットや個人のソフトウェアウォレットで保管していた暗号資産は、秘密鍵やリカバリーフレーズがなければ誰も動かせません。それでも、国税当局の見解としては秘密鍵がないことを理由に相続財産から除くことはできないとされています。残高がブロックチェーン上で確認できる以上、財産として存在するからです。
実務では、パソコン・スマートフォン・紙のメモ・金庫などを徹底的に探すことになります。本当に復元できない場合でも、評価して申告し、その事情を記録しておくのが原則的な対応です。
相続後に売却したときの所得税
相続人が暗号資産を売却した場合の利益は、原則として雑所得です。取得費は被相続人の取得価額を引き継ぐため、生前の購入記録(取引所の年間取引報告書など)を探しておきます。取得価額が不明なときは売却額の5%とする取り扱いがあり、税負担が重くなりがちです。生前にウォレットの一覧と取得記録を整理しておくことが、最大の相続対策になります。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。