信託は「財産を誰に、いつ、どう渡すか」を柔軟に設計できる仕組みですが、相続税は信託の形ではなく、誰が利益を受けるかに着目して課税します。遺言の代わりに使う遺言代用信託と、受益者を順番に指定する受益者連続型信託について、課税のタイミングと評価の考え方を整理します。
遺言代用信託:委託者の死亡時に相続税
遺言代用信託は、委託者(財産を託す人)が生きている間は自分を受益者とし、死亡したときに配偶者や子を受益者とする信託です。信託銀行の商品として、死亡後すぐに葬儀費用や生活費を受け取れるものが知られています。
課税は次のとおりです。
- 設定時:委託者=受益者なので課税なし
- 委託者の死亡時:新たな受益者が、信託財産を遺贈により取得したものとみなして相続税
- 評価額:信託財産そのものの相続税評価額(預金なら残高、不動産なら路線価等による評価)
検認や遺言執行者の手続きがなく生命保険に近い使い勝手ですが、生命保険のような非課税枠はありません。
受益者連続型信託:受益者が交代するたびに課税
「自分の死後は妻、妻の死後は長男」のように、受益者を順番に定める信託です。遺言では指定できない「次の次」の承継先を決められるのが特徴で、信託設定から30年を経過した後に新たに受益者となった人が死亡するまで、という期間の上限があります。
| タイミング | 課税 |
|---|---|
| 委託者の死亡(第1受益者が取得) | 第1受益者に相続税 |
| 第1受益者の死亡(第2受益者が取得) | 第1受益者から遺贈されたものとみなし、第2受益者に相続税 |
重要なのが評価の方法です。第1受益者は「自分が生きている間だけ」利益を受ける権利ですが、相続税の評価ではその制約を考慮せず、信託財産の全額で評価します。妻が評価額1億円の財産を取得し、妻の死亡時に長男が同じ財産を再び1億円で取得すれば、二度にわたって全額が課税されます。
小規模宅地等の特例と債務控除
信託財産に自宅や事業用の土地が含まれる場合、受益者が要件を満たせば小規模宅地等の特例を適用できる扱いです。受益者が実際に居住しているかなど、通常の要件を信託の受益者に当てはめて判断します。
一方、信託内の借入金(信託財産責任負担債務)は債務控除できますが、受益者連続型で信託が続く場合の扱いは複雑で、個別の確認が必要です。
注意点
- 遺留分:信託を使っても、遺留分を侵害された相続人からの請求は免れないと考えるのが安全
- 設計次第で課税が重複するため、二次相続まで含めた試算が不可欠
- 受託者が提出する信託の調書により、税務署は信託の内容を把握している
信託を使った承継は法律面と税務面の両方で設計が必要です。無料相談で承継の希望をお聞かせください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。