「財産の一部を、お世話になった団体に遺したい」という遺贈寄付は、近年広がっています。遺言で法人に財産を遺贈する場合、受け取る法人は相続税の納税義務者にならず、原則として相続税はかかりません。ただし、寄附する財産の種類によっては、亡くなった方に所得税がかかる「みなし譲渡」という落とし穴があります。
法人への遺贈には相続税がかからないのが原則
相続税は個人に課される税金です。公益法人・NPO法人・学校法人・自治体などの法人が遺贈を受けても、相続税は課されません。遺贈された分は相続人の課税価格からも外れるため、相続人の相続税も減ります。
ただし例外があります。持分の定めのない法人(一般社団法人や一部の財団など)への遺贈で、それによって相続人などの税負担が不当に減ると認められる場合は、法人を個人とみなして相続税が課されます。団体の運営が特定の親族に偏っているような場合が典型で、公益認定を受けた法人や認定NPO法人ならこの心配はほぼありません。
なお、相続人が相続した財産を申告期限までに国や公益法人に寄附する場合は、別の非課税規定(相続財産の寄附の特例)があり、要件や対象団体が異なります。
みなし譲渡課税に注意
不動産や株式を法人に遺贈すると、所得税法上、被相続人がその財産を時価で法人に譲渡したものとみなされ、含み益に対する譲渡所得税が準確定申告で課されます。納税するのは相続人で、相続財産から支払うことになります。
例:取得費 1,000万円の土地(時価 4,000万円)を法人に遺贈 みなし譲渡所得 = 4,000万円 − 1,000万円 = 3,000万円 所得税・住民税(長期譲渡 20.315%)≒ 609万円 → 相続人が準確定申告で納付
公益法人などへの寄附については、一定の要件(寄附の日から2年以内に公益目的事業に使う、寄附者の所得税や親族の相続税を不当に減少させないなど)を満たし、国税庁長官の承認を受ければ、このみなし譲渡が非課税になる特例があります。ただし承認の手続きは煩雑で、承認されないリスクもあります。
現金で寄附するのが実務的
みなし譲渡の問題は、現金・預貯金の遺贈では起こりません。そのため、不動産や株式を寄附したい場合は、遺言で「換価して寄附する(清算型遺贈)」と定め、遺言執行者が売却して代金を寄附する形がよく使われます。この場合、売却による譲渡所得は相続人に課税されるため、取得費加算の特例や空き家特例が使えるかを確認します。
団体側の受け入れ要件
多くの団体は、現金の遺贈は受け入れても、不動産・未上場株式・美術品は辞退することがあります。遺言を作る前に団体へ受け入れの可否と希望する形式を確認し、遺言執行者を指定しておくことが欠かせません。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。