相続した株式・投資信託の取得費と取得日の引き継ぎ|NISA口座は相続で課税口座へ

相続した株式や投資信託は被相続人の取得費と取得日を引き継ぎ、売却時の譲渡所得はその取得費で計算します。被相続人のNISA口座の商品は相続人のNISAに移せず、相続開始日の時価を取得費として課税口座へ移ります。手続きと注意点を解説します。

相続した株式や投資信託を売却するとき、「いくらで買ったことになるのか」を間違えると、譲渡所得の計算が大きく狂います。原則は被相続人の取得費と取得日をそのまま引き継ぐことです。ただし、NISA口座で保有していた商品だけは扱いが異なります。相続税評価と所得税の取得費は別物である点も含めて整理します。

取得費と取得日は被相続人から引き継ぐ

相続で取得した株式や投資信託を売却した場合、取得費は相続時の評価額ではなく、被相続人が購入したときの価額です。取得日も被相続人の購入日を引き継ぎます。

例:父が20年前に1株 1,000円で買った株式 1,000株を相続。相続税評価額は1株 3,000円。相続人が1株 3,500円で売却 譲渡所得 = 3,500円 × 1,000株 − 1,000円 × 1,000株 = 250万円 所得税・住民税(20.315%)≒ 50万7,875円

取得費の根拠は、証券会社の取引報告書や特定口座年間取引報告書で確認します。特定口座の株式を相続人の特定口座に移管すれば、証券会社が取得費を引き継いで管理します。記録がない株式は、過去の明細や名義書換の記録、過去の株価などで調べ、どうしても分からなければ売却代金の5%を取得費とします。

申告期限から3年以内に売却すれば、相続税の一部を取得費に加算する「取得費加算の特例」も使えます。

NISA口座の商品は課税口座に移る

被相続人がNISA口座で保有していた株式・投資信託は、相続人のNISA口座に移すことはできません。相続人の特定口座または一般口座に移管され、次の扱いになります。

  • 取得費は、被相続人の購入価額ではなく、相続開始日の時価(終値)
  • 相続開始日までの値上がり益はNISAの非課税のまま清算され、課税されない
  • 相続開始日以降の値動きだけが、相続人の譲渡所得の計算対象になる

例:被相続人がNISAで 100万円で買った投資信託が、相続開始日に 150万円。相続人が 160万円で売却 譲渡所得 = 160万円 − 150万円 = 10万円(50万円の値上がり分は非課税)

移管には同じ証券会社に相続人の口座が必要です。他社で取引している相続人も、いったん同じ証券会社に口座を開いて移管します。

相続税評価と取得費は別

相続税の申告では、上場株式は相続開始日の終値など4つの価格のうち最も低い価格で評価します。これは相続税の計算のためだけの金額で、売却時の取得費には使いません。「相続税を払ったのだから評価額が取得費になるはず」という誤解が多いため注意が必要です。

売却の時期は、取得費加算の特例の期限と、相続人の他の所得や損益通算の状況を見て決めるのが実務的です。

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。

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