親の認知症対策として家族信託を組んだ場合、親が亡くなると多くの信託は終了します。このとき**残った財産を誰が受け取るか(帰属権利者)**によって、相続税や贈与税がかかるかどうかが決まります。設定時には意識しにくい「終わり方の課税」を整理します。
信託終了の原因と残余財産の行き先
信託は、契約で定めた終了事由(受益者の死亡、目的の達成、一定期間の経過など)が生じると終了します。残余財産は、契約で定めた帰属権利者が取得し、定めがなければ委託者またはその相続人に帰属します。
典型例は「委託者兼受益者である父が死亡したら信託は終了し、残余財産は長男に帰属する」という契約です。
課税の考え方は「受益者から帰属権利者へ」
| 受益者と帰属権利者の関係 | 課税 |
|---|---|
| 受益者=帰属権利者 | 課税なし(自分の財産が戻るだけ) |
| 受益者の死亡で終了し、別の人が帰属権利者 | 受益者から遺贈されたものとみなし、帰属権利者に相続税 |
| 受益者が生存中に終了し、別の人が帰属権利者 | 受益者から贈与されたものとみなし、帰属権利者に贈与税 |
上の典型例では、父の死亡により長男が残余財産を取得するため、長男に相続税がかかります。長男が相続人なので2割加算はなく、父の他の相続財産と合算して通常どおり計算します。
注意したいのは、父の生前に信託を途中で終了させる場合です。契約を見直すつもりで終了させ、残余財産を長男に帰属させると、父から長男への贈与として贈与税の対象になります。信託を終了させる前に、帰属権利者を委託者自身にしておくなどの手当てが必要です。
不動産の登録免許税と不動産取得税
信託終了で不動産を帰属権利者に移す際は、信託登記の抹消と所有権の移転登記を行います。
- 受益者の相続人が帰属権利者となり、相続と同じ実質であれば、登録免許税は**相続と同じ0.4%**とする取り扱いがあります(信託の効力発生時から委託者のみが受益者であったことなどの要件あり)
- 要件を満たさない場合は、通常の所有権移転として2%
- 不動産取得税も、相続と同じ実質であれば非課税の扱いが可能ですが、要件の確認が必要です
これらの軽減を受けられるかは、信託契約の文言(受益者の定め方、帰属権利者の定め方)で決まるため、契約時に税務面を見据えた設計が欠かせません。
小規模宅地等の特例と債務
帰属権利者が取得した土地は、信託財産であっても、帰属権利者が要件を満たせば小規模宅地等の特例を適用できます。信託に借入金が紐づいている場合は、債務控除の可否を契約内容から確認します。
家族信託は、設定時の課税がないことばかりが強調されがちですが、出口での課税を試算して初めて全体の負担が分かります。終了時の帰属先が決まっていない契約は、早めに見直しを検討してください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。