入院や介護の末に亡くなった場合、死亡後しばらくして病院や施設からの請求書と、健康保険からの払戻しの案内が届きます。これらは相続税の計算に直接影響するお金です。「払戻しは財産に加える」「未払いは債務として引く」という整理を押さえれば、申告での扱いは難しくありません。
高額療養費・高額介護サービス費の払戻し
1か月の医療費の自己負担が上限額を超えると、超えた分が高額療養費として払い戻されます。介護サービスにも同様の高額介護サービス費があります。被相続人が受け取るはずだったこれらの払戻金は、死亡時にはまだ入金されていなくても、被相続人の財産(未収金)として相続税の課税対象です。
申請は相続人が行い、受け取った金額を申告書の「その他の財産」に計上します。支給決定の通知書を根拠書類として保管してください。なお、健康保険から遺族に支給される葬祭費・埋葬料は、遺族自身への給付であり相続財産には含めません。
未払いの医療費・施設利用料は債務控除
死亡時点で支払いが済んでいない入院費・薬代・介護施設の利用料は、被相続人の債務として相続財産から差し引けます。領収書に「○月○日〜死亡日分」と期間が示されたものを保管します。死亡後の原状回復費用や退去費用も、契約上被相続人が負担すべきものであれば債務に含められます。
例:相続財産 6,000万円、未払入院費 80万円、高額療養費の払戻し 15万円 課税価格 = 6,000万円 + 15万円 − 80万円 = 5,935万円
医療費控除はどちらの申告で使うか
医療費は、所得税の医療費控除でも使えますが、どの申告に入れるかが時期で分かれます。
| 支払った時期 | 医療費控除を使える人 |
|---|---|
| 死亡日までに被相続人が支払ったもの | 被相続人の準確定申告 |
| 死亡後に相続人が支払ったもの | 被相続人と生計を一にしていた相続人の確定申告 |
死亡後に支払った医療費は、準確定申告の医療費控除には入れられない一方、相続税の債務控除にはなります。生計を一にする配偶者や子が支払った場合は、その相続人の確定申告で医療費控除も受けられ、両方で使えることになります。高額療養費で補てんされた分は、医療費控除の対象から差し引きます。
実務上の対応
病院・施設からの最終請求、高額療養費の支給決定通知、介護保険の負担限度額認定の書類は、相続税の申告まで一式で保管しておきます。医療費の総額が大きい場合は、相続税・所得税の両面で控除漏れがないか確認しましょう。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。