自分の相続税は期限内にきちんと納めたのに、数年後に税務署から「他の相続人の相続税が未納なので納めてください」という通知が届く。これが相続税の連帯納付義務です。この記事では制度の仕組みと、通知が来たときの対応を解説します。
連帯納付義務の仕組み
同じ被相続人から財産を取得した人は、お互いの相続税について、自分が相続で受けた利益の範囲内で連帯して納付する義務を負います(相続税法34条)。遺産を取得した人全員が対象で、放棄していない限り逃れられません。
「受けた利益」とは、取得した財産の価額から、自分が納めた相続税と承継した債務を差し引いた額です。例えば1億円の財産を取得して相続税2,000万円を納めた人は、8,000万円を上限に他の相続人の未納分を負担する可能性があります。
ただし2012年の改正で、次の場合には連帯納付義務が解除されます。
- 申告期限から5年を経過しても税務署から納付通知書が届いていない分
- 本来の納税者が延納や納税猶予(農地・事業承継税制など)の適用を受けている分
通知が届くまでの流れ
税務署はいきなり連帯納付義務者に請求するわけではなく、段階を踏みます。
- 本来の納税者に督促状を送る
- 督促後1か月を過ぎても完納されない場合、連帯納付義務者に「完納されていない旨のお知らせ」を送る(この時点では支払い義務の確定ではない)
- 本来の納税者から徴収できないと判断すると、連帯納付義務者に「納付通知書」を送る
- 納付通知書の到達から2か月以内に納めれば、延滞税ではなく利子税(より低い率)で済む
- それでも納めなければ督促状が届き、財産の差押えの対象になる
「お知らせ」が届いた段階で、本来の納税者に連絡して状況を確認し、納付の見通しを把握することが大切です。
実務上の対応と予防策
- 遺産分割の際に、各相続人が自分の相続税を納められる財産(現金・預金)を取得できるよう配慮する
- 不動産ばかり取得する相続人がいるなら、納税資金をどう確保するかを協議書作成時に確認する
- 連帯納付義務で代わりに納めた分は、本来の納税者に求償できる。ただし本人に資力がなければ回収は難しい
- 代わりに納めた分を求償せずに済ませると、本来の納税者への贈与とみなされる可能性がある
「自分は納めたから関係ない」とは言えない制度です。相続人の中に納税が難しそうな人がいる場合は、申告の段階で納税計画も含めて相談しておくと安心です。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。