相続税の申告書には相続人全員が署名する欄があります。しかし、相続人同士が口も利かない状況では、一緒に申告書を作ること自体ができません。この記事では、申告書を別々に提出するケースの手続きと、気を付けるべき点を解説します。
共同提出が原則だが、別々でも違法ではない
相続税法は、同じ被相続人から財産を取得した人が複数いる場合、申告書を共同で提出することができると定めています。「しなければならない」ではなく「できる」なので、各相続人が自分の分だけを記載した申告書を別々に提出しても問題ありません。別々に提出するのは次のような場合です。
- 遺産分割で対立し、調停や訴訟になっている
- 相続人の一人と連絡が取れない、または協力を拒んでいる
- 相続人ごとに別々の税理士に依頼している
- 一部の相続人が海外に住んでいて書類のやり取りが間に合わない
別々に提出するときの手順
- 財産と債務の全体を把握する。自分の分だけでなく、被相続人の財産すべてを記載しないと相続税の総額が計算できない
- 相続税の総額は、全財産を法定相続分で分けたと仮定して計算する。このため他の相続人が取得する財産の評価額も必要になる
- 自分が取得する財産について、按分割合に応じた税額を計算する
- 申告書の相続人欄には、自分の氏名のみ記載し、他の相続人の氏名は財産の取得状況を記載する欄に参考として記載する
- 添付書類(戸籍、遺産分割協議書または未分割の場合は分割見込書など)は各自で揃えて提出する
申告書の様式は共同提出のときと同じです。税務署は同じ被相続人について複数の申告書が出てきたときに、相続財産の総額や評価額が一致しているかを突き合わせます。
別々に出すと起きやすい問題
最大のリスクは評価の食い違いです。同じ土地について、一方の相続人が8,000万円、もう一方が7,000万円で申告すると、相続税の総額が合わず、税務署から照会を受けます。低いほうの評価が否認されれば過少申告加算税の対象です。
また、債務や葬式費用を双方が二重に控除する、生命保険の非課税枠の按分が重複するといったミスも起きます。別々に提出する場合でも、財産の範囲と評価額については相続人間(または税理士間)で情報を共有し、できるだけ統一するのが安全です。
やむを得ず別々に提出する状況なら、申告の内容が後から調査で問題にならないよう、評価資料の共有方法を含めて無料相談でご相談ください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。