相続人がそれぞれ別の税理士に依頼したら|土地評価の食い違いと税務署の対応

対立する相続人が別々の税理士に申告を依頼すると、同じ土地の評価額や債務の扱いが食い違うことがあります。相続税は総額を計算してから按分する仕組みのため、税務署が照会や調査で統一を求めます。食い違いを防ぐ実務と起きたときの対応を解説します。

遺産分割で対立した兄弟が、それぞれ別の税理士に相続税の申告を頼む。実務ではよくある状況ですが、相続税の計算は「全体の総額を出してから各人に按分する」仕組みのため、2人の税理士が出した評価額が違うと、申告書同士が整合しません。この記事では何が起きるのか、どう対応するかを解説します。

評価が食い違うとどうなるか

相続税は、まず被相続人の財産全体を評価して相続税の総額を計算し、それを各人の取得割合で按分します。土地の評価は税理士の判断(補正の適用、評価単位の分け方、特例の適用)で差が出やすく、同じ土地で1〜2割の違いが出ることは珍しくありません。

例えば、兄の税理士が自宅の土地を6,000万円、弟の税理士が5,000万円と評価すると、2通の申告書で相続税の総額が異なり、兄弟それぞれの税額も異なる前提で計算されます。税務署は同じ被相続人の申告書を突き合わせるため、この食い違いは必ず把握されます。

その後の流れは一般に次のとおりです。

  1. 税務署から双方(または一方)に評価の根拠について照会が来る
  2. 評価が低い側に対して、高い側の評価や税務署独自の評価に基づく修正を求められることがある
  3. 修正申告に応じれば過少申告加算税(10%または15%)と延滞税がかかる。応じなければ更正処分を受ける
  4. 逆に高い側の評価が過大であれば、更正の請求で還付を受けられる

低い評価が常に否認されるわけではありません。根拠が明確な評価減(不整形地補正、無道路地、セットバックなど)であれば、低いほうが正しいこともあります。

食い違いを防ぐ実務

別々の税理士に依頼する場合でも、次のようにすれば食い違いは小さくできます。

  • 財産の範囲と評価資料を共有する: 残高証明書、登記事項証明書、固定資産税の評価証明、路線価図などの基礎資料を同じものにする
  • 評価額の照合: 申告前に双方の税理士が主要な財産(特に土地・非上場株式)の評価額を突き合わせる。対立していても、評価の統一は双方の利益になる
  • 債務・葬式費用の分担を確定: 誰がどの債務を引き継ぎ、葬式費用を誰が負担したかを決めておかないと二重控除や漏れが起きる
  • 分割見込書の添付: 未分割なら全員が同じ内容の見込書を出す

食い違いが起きてしまったとき

すでに異なる評価で申告してしまった場合、税務署からの照会を待つより、自分の税理士に相手方の評価額を確認してもらい、どちらが妥当かを検討して先に修正申告や更正の請求をするほうが加算税を抑えられます。相続人の対立が税務上の不利益に直結しないよう、申告の段階から評価の統一を意識して進めることが大切です。

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。

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