特定の美術品の相続税の納税猶予|美術館に寄託した登録美術品の80%が猶予される制度

文化財の保存を目的として、美術館に長期寄託している登録美術品を相続した場合、その美術品にかかる相続税の80%が猶予される制度があります。対象となる美術品、寄託契約と保存活用計画の要件、猶予後の手続きを解説します。

絵画や工芸品などの美術品は、相続税の評価額が高くなる一方で、売却して納税資金に充てると散逸してしまう問題があります。そこで2019年から、美術館に寄託して公開している一定の美術品を相続した場合に、相続税の一部を納税猶予する制度が設けられています。対象になる美術品は限られますが、該当すれば大きな効果があります。

対象となる美術品

猶予の対象は「特定の美術品」で、次の要件をすべて満たすものです。

  • 美術品の公開促進に関する法律に基づく「登録美術品」であること(文化庁長官の登録)
  • 重要文化財、または登録有形文化財(美術工芸品)であること
  • 被相続人が美術館と長期の寄託契約を結び、寄託していたこと
  • 寄託先の美術館について、文化庁長官の認定を受けた「保存活用計画」があること

つまり、単に高価な美術品を持っていただけでは対象になりません。生前に登録と寄託の手続きを済ませておく必要があり、相続後に手続きを始めても間に合いません。

猶予される税額

相続人がその美術品を取得し、寄託を続ける場合、美術品に対応する相続税額の80%が猶予されます。残りの20%は申告期限までに納付します。

例えば、美術品に対応する相続税額が500万円なら、400万円が猶予され、100万円を納付します。猶予を受けるには、申告期限までに申告書を提出し、猶予税額に見合う担保を提供する必要があります。美術品そのものを担保にすることも認められています。

猶予後の手続きと打ち切り

  • 3年ごとに継続届出書を提出する
  • 美術品を譲渡した場合、寄託契約を終了した場合、登録が抹消された場合などは猶予が打ち切られ、猶予税額と利子税を納付する
  • 美術館側の事情で寄託契約が終了した場合は、一定期間内に別の美術館と寄託契約を結べば継続できる

猶予税額は、相続人が死亡したとき、または美術品を国などに寄贈したときに免除されます。

項目 内容
対象 登録美術品で重要文化財等、美術館に長期寄託
猶予割合 美術品部分の相続税の80%
継続届出 3年ごと
免除 相続人の死亡、国等への寄贈

実務上の対応

この制度は事前準備が前提のため、文化財級の美術品をお持ちの方は、生前に登録と寄託を検討するのが現実的な対策です。美術品の評価は専門家による鑑定が必要になるため、相続財産に美術品が含まれる場合は早めに評価額の把握から始めてください。

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。

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