1992年に指定された生産緑地の多くは2022年に30年を迎え、所有者は「特定生産緑地に指定するか、しないか」を選びました。その選択が、これから起きる相続の税額を決めます。結論から書くと、特定生産緑地に指定した農地は納税猶予を引き続き使えますが、指定しなかった農地は次の相続で納税猶予が原則使えず、評価の減額も5%にとどまります。
特定生産緑地とは
生産緑地は指定から30年を経過すると市区町村への買取り申出ができるようになり、農地としての制限が外れる道が開きます。特定生産緑地は、30年を迎える前に所有者が申し出て、買取り申出ができる時期を10年先に延ばす制度です。10年ごとに再び指定を受けることで延長を続けられます。延長中は農地として管理する義務が続く代わりに、固定資産税は農地課税のまま、相続税の納税猶予も使えます。
指定した農地としなかった農地の違い
| 特定生産緑地に指定した | 指定しなかった(30年経過) | |
|---|---|---|
| 買取り申出 | 10年後まで不可 | いつでも可 |
| 固定資産税 | 農地課税 | 5年かけて宅地並み課税へ |
| 相続税の納税猶予 | 次の相続でも適用可 | 次の相続では原則適用不可 |
| 相続税評価の減額 | 残り期間に応じて10〜35% | 5% |
三大都市圏の特定市(大阪府・京都府・兵庫県の主要な市の多く)では、市街化区域内の農地は生産緑地でなければ納税猶予の対象になりません。指定しなかった農地は買取り申出ができる状態になるため、新たな相続で猶予を受けることができないのです。ただし、すでに納税猶予を受けている人は、特定生産緑地に指定しなくても、その人の代の猶予は続きます。
評価の減額は、買取り申出ができるまでの残り期間で決まります。特定生産緑地で残り7年なら15%減、指定しなかった農地は「申出ができる生産緑地」として5%減です(生産緑地の相続税評価)。主たる従事者が亡くなった相続では、特定生産緑地でも申出が可能になるため5%減になります。
相続時点での確認事項
- 指定の有無:市区町村の都市計画担当部署で、筆ごとに特定生産緑地かどうかを確認します。同じ家でも筆によって指定した・しなかったが分かれていることがあります
- 指定の期限:特定生産緑地の10年の満了日。相続開始日から満了日までの残り期間が減額割合を決めます
- 次の再指定:満了前に再指定の申出をしないと特定生産緑地でなくなり、以後の相続で猶予が使えなくなります。農業相続人が高齢なら、10年ごとの判断を誰がするかも決めておきます
- 主たる従事者:亡くなった方が主たる従事者だったかどうかで、買取り申出の可否と減額割合が変わります
指定しなかった農地の相続
猶予が使えないため、宅地並みの評価額に対する相続税を申告期限までに納めることになります。買取り申出をして宅地化し売却する、貸家を建てるなど出口を決める必要があり、農地の転用と売却の手続きが絡みます。指定した農地は、納税猶予の要件を満たせば猶予を受けられますが、その後の継続届出と打ち切り事由の管理が10年単位で続きます。
当センターでは、生産緑地の指定状況を筆ごとに確かめたうえで農地を含む土地一覧を作り、相続税を試算します。相続税申告は基本報酬99,000円(税込・遺産総額4,000万円まで)から、土地の評価は1か所110,000円(税込)から、初回相談は無料です。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。