農家の相続では、田畑のほかに農業用倉庫や作業場、ビニールハウス、農機具置場の敷地が出てきます。登記上は宅地や雑種地でも、評価の仕方は周りの宅地と同じではありません。結論から書くと、調整区域や農用地区域にある農業用施設用地は「農地として評価した価額+宅地造成費」で評価でき、倉庫は固定資産税評価額、ビニールハウスは構築物として評価し、倉庫の敷地には小規模宅地等の特例(特定事業用)が使える余地があります。
農業用施設用地の評価
財産評価基本通達では、農業用施設(農機具の格納庫、作業場、堆肥舎、温室など)の敷地のうち、農用地区域内または市街化調整区域内にあるものは、次のように評価します。
評価額 =(その土地が農地だったとした場合の1㎡当たり価額 + 1㎡当たり宅地造成費)× 地積
農地としての価額は1㎡数百円、造成費も1㎡数千円の水準なので、周辺の宅地の数分の1になるのが通常です。ただし、この方法で計算した価額が、付近の宅地に比準した価額を上回る場合は、その宅地に比準した価額で評価します。市街化区域内の農業用施設用地はこの取扱いの対象外で、通常の宅地として路線価方式などで評価します。
計算例:調整区域の農業用倉庫の敷地300㎡、純農地として評価した価額が1㎡500円、宅地造成費が1㎡3,000円なら、(500円+3,000円)×300㎡=105万円です。隣の宅地並みに1㎡4万円で評価すると1,200万円になるため、取扱いを知らないと大きく過大評価します。
建物と構築物
| もの | 評価 |
|---|---|
| 倉庫・作業場(登記の有無を問わず) | 固定資産税評価額×1.0 |
| ビニールハウス・パイプハウス・井戸 | 構築物:(再建築価額−経過年数の償却費)×70% |
| トラクターなどの農機具 | 動産:売買実例や精通者意見、なければ再調達価額−償却費 |
倉庫が未登記で固定資産税の課税台帳にも載っていない場合は、再建築価額から償却費を引いた額で評価します。
小規模宅地等の特例が使えるか
農業も「事業」なので、亡くなった方の農業の用に供されていた倉庫や作業場の敷地は、特定事業用宅地等として400㎡まで80%の減額が使える可能性があります。要件は、相続人がその事業を申告期限まで引き継いで続け、敷地を保有していることです(小規模宅地等の特例の基礎)。田畑そのものは「宅地等」ではないため対象外で、農地には納税猶予という別の制度があります。
逆に、農業用施設用地は納税猶予の対象(農地・採草放牧地・準農地)には含まれません。倉庫の敷地には小規模宅地等の特例、田畑には納税猶予、と制度を使い分けます。相続開始前3年以内に新たに事業の用に供した宅地は原則として特例の対象から外れるため、建て替えや増築の時期も確認します。
実務での確認点
- 固定資産税の課税明細で、現況地目が「宅地」「雑種地」の筆のうち農業用施設の敷地を抜き出す
- 都市計画図と農業振興地域の図面で、調整区域か、農用地区域かを確認する
- 倉庫の固定資産税評価額、ハウスの設置年と取得価額を集める
- 農地・自宅の敷地と隣接していれば評価単位の分け方を整理する
農家の相続の全体像は農家の相続で押さえる4つの論点にまとめています。当センターでは、農業用施設用地を含む土地一覧を作り、農地の区分ごとの評価と相続税の試算を行います。相続税申告は基本報酬99,000円(税込・遺産総額4,000万円まで)から、土地評価は1か所110,000円(税込)から、初回相談は無料です。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。