配偶者の税額軽減は1億6,000万円または法定相続分まで税額がかからない強力な制度ですが、何にでも使えるわけではありません。相続税の申告で意図的に隠した財産や、事実と異なる形に偽った財産(隠ぺい・仮装財産)については、配偶者が取得していても軽減の対象から除かれます。この記事ではその仕組みと影響を解説します。
隠ぺい・仮装財産とは
隠ぺいとは、財産があることを知りながら申告書に載せない、帳簿や証拠を隠すといった行為です。仮装とは、実際とは異なる名義や契約の形を作って事実を偽ることをいいます。典型的には次のような例です。
- 被相続人の預金を配偶者名義に移し替えて、配偶者の固有財産であるかのように申告から除く
- 相続開始直前に多額の現金を引き出し、存在しないものとして申告する
- 架空の債務を計上して財産を減らす
このような行為が税務調査で認定されると、過少申告加算税より重い重加算税(35%)が課され、さらに配偶者の税額軽減もその財産については使えなくなります。
軽減が使えなくなる範囲
軽減が否定されるのは、隠ぺい・仮装された財産に対応する部分だけです。適正に申告していた財産についての軽減は維持されます。
例えば、配偶者が1億円の財産を取得して軽減で税額ゼロだったところ、調査で配偶者名義の名義預金3,000万円が隠ぺいと認定された場合、この3,000万円については軽減が使えず、配偶者に税額が発生します。加えて重加算税と延滞税がかかるため、負担は大きくなります。
| 状況 | 加算税 | 配偶者の税額軽減 |
|---|---|---|
| 単純な申告漏れ(うっかり) | 過少申告加算税10〜15% | 修正申告で軽減を適用できる |
| 隠ぺい・仮装と認定 | 重加算税35% | その財産には適用されない |
「うっかり漏れ」と「隠ぺい」の違い
申告漏れがすべて隠ぺいになるわけではありません。相続人が存在を知らなかった口座、評価を誤った財産などは、修正申告で正しく申告すれば配偶者の税額軽減を受けられます。隠ぺい・仮装と判断されるのは、意図的に隠したことが証拠から認められる場合です。
ただし、名義預金については「配偶者が自分の財産だと思っていた」という主張が通りにくいケースもあります。被相続人の収入から作られた預金を配偶者名義にしていた場合、相続財産として申告しておくのが安全です。
実務上の対応
配偶者の税額軽減は、正しく申告する人のための制度です。申告の段階で財産の範囲に迷うものがあれば、「とりあえず除く」のではなく、税理士に相談して申告に含めるかを判断しましょう。名義預金の整理に不安がある場合は無料相談でご相談ください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。