個人で商店や工場、診療所などを営んでいた方が亡くなった場合、その事業に使っていた土地は「特定事業用宅地等」として400㎡まで80%の減額が受けられます。ただし、相続開始前3年以内に新たに事業を始めた土地は、一定の例外を除き対象外です。この記事では、事業承継の要件と3年ルールを整理します。
基本の要件
特定事業用宅地等に該当するには、次の両方が必要です。
- 相続開始の直前に、被相続人(または生計を一にする親族)の事業に使われていた土地であること
- その土地を取得した親族が、申告期限までに事業を引き継ぎ、申告期限まで事業を続け、土地を保有し続けること
ここでいう事業には、不動産の貸付業や駐車場業は含まれません。これらは貸付事業用宅地等(200㎡・50%)の方で判定します。
相続開始前3年以内に始めた事業の除外
2019年4月以降の相続から、相続開始前3年以内に新たに事業の用に供された土地は、原則として特定事業用宅地等から除かれています。相続直前に土地を買って形だけ事業を始め、評価を8割下げるという対策を防ぐための規定です。
ただし、例外があります。その土地の上にある建物や機械などの減価償却資産の価額が、その土地の相続税評価額の15%以上であれば、3年以内に始めた事業でも対象になります。実態のある事業投資を伴う場合は除外しない、という趣旨です。
- 例:土地の評価額4,000万円、3年前に建てた店舗建物の評価額800万円
- 800万円÷4,000万円=20%≧15% → 対象となる
事業承継の要件で気をつける点
事業を引き継ぐ親族は、申告期限までに事業の主体になっている必要があります。開業届を出す、仕入先や取引先との契約を引き継ぐ、確定申告を自分の名前で行う、といった実態が求められます。
次のような場合は要件を満たさないおそれがあります。
- 事業を引き継いだ子が、申告期限前に廃業した
- 事業は続けているが、土地は事業をしていない別の相続人が取得した
- 相続開始後に事業の内容を全く別のものに変えた(一部の転業は認められる余地があります)
実務上の対応
個人事業の相続では、土地の特例と並行して準確定申告や事業の引き継ぎ手続きも必要です。相続が発生してから事業承継の形を整える時間は限られているため、生前から誰が継ぐかを決めておくことが最も効果的な対策になります。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。