生前対策というと「贈与で税金を減らす」ことを思い浮かべがちですが、節税は最後の工程です。財産の全体像が分からないまま贈与を始めると、分け方や納税資金で行き詰まります。相続専門の立場から、対策を進める順番をチェックリストにしました。
ステップ1・2:財産を把握し、相続税を試算する
ステップ1:財産を把握する
- 不動産(所在地、評価額、名義、利用状況、ローン)
- 預貯金・有価証券(金融機関ごとの残高、家族名義の口座も含めて実質の所有者を確認)
- 生命保険(契約者・被保険者・受取人・保険料負担者)
- 自社株、貸付金、ゴルフ会員権、貴金属など
- 債務(借入金、保証債務)
財産目録を1枚にまとめ、年に1回更新します。名義預金や名義保険の整理は、この段階で行います。
ステップ2:相続税を試算する
財産目録から相続税の概算を出します。基礎控除「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超えるか、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減でどこまで下がるかを確認します。一次相続と二次相続をセットで試算することが重要です。相続税シミュレーションで目安を把握できます。
ステップ3:分け方を決める
- 誰にどの財産を渡すかを決め、遺言書(公正証書が望ましい)にする
- 不動産が分けにくいなら、代償分割の原資や共有回避の方法を考える
- 遺留分に配慮し、生前贈与の内容を遺言と整合させる
- 認知症に備え、任意後見や家族信託を検討する
分け方が決まっていないと、贈与の相手や特例の適用可否が判断できません。
ステップ4:納税資金を確保する
- 相続税の試算額に対して、相続人ごとに納税できる現金があるか
- 不足するなら生命保険(非課税枠・受取人設計)、不動産の一部売却、延納の検討
- 自社株が中心なら事業承継税制や会社による自己株式の買取りの検討
ステップ5:節税策を選ぶ
ここで初めて、暦年贈与・相続時精算課税・住宅資金やおしどり贈与の特例・不動産の活用・養子縁組などを比較します。
- 相続までの期間が長い → 暦年贈与を年数をかけて
- 相続が近い・値上がり資産 → 相続時精算課税
- 持ち戻し対象外にしたい → 相続人でない孫へ(遺贈・保険の受取人にしない)
順番を守らないと、相続税がかからない家庭で不要な贈与税を払っていた、特定の子への贈与が遺留分の争いの火種になった、相続税は減ったが現金がなく延納や売却に追い込まれた、といった問題が起きます。対策は一度に全部やる必要はありません。ステップ1と2だけでも、取るべき対策の優先順位が見えてきます。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。