相続人間で不動産の評価額が食い違うとき|不動産鑑定と相続税評価明細の共有

遺産分割で不動産の評価額に争いがある場合、相続税の評価額と民法上の時価は別物であることを前提に、査定書や不動産鑑定で時価を把握します。税理士が作る評価明細書を相続人全員で共有する意義と、鑑定費用の扱い、合意の残し方を解説します。

「自宅を長男が取るなら代償金は3,000万円が相当だ」「いや、路線価で計算すれば2,000万円だ」。遺産分割で最ももめやすいのが、不動産の評価額です。相続税の計算に使う評価額と、遺産分割で使う評価額は原則として別のものです。この違いを相続人全員が理解することが、解決の第一歩です。

相続税評価額と時価の違い

評価の種類 使う場面 水準
相続税評価額(路線価方式・倍率方式、建物は固定資産税評価額) 相続税の申告 時価の8割程度とされる
時価(実勢価格) 遺産分割、遺留分、代償金の算定 市場で売れる価格

遺産分割では、相続人全員が合意すればどの評価額を使っても構いません。相続税評価額で分ける家族も多くあります。しかし、一人でも「時価で分けるべきだ」と主張すれば、合意は時価ベースで考えざるを得ません。評価の時点も、相続税は相続開始時、遺産分割は分割時が基準とされます。

時価を把握する3つの方法

  1. 不動産業者の査定書:無料または低額で取得できますが、業者によって幅があります。複数社から取るのが一般的です
  2. 不動産鑑定士の鑑定評価書:有料(物件により数十万円程度)ですが、調停・審判でも証拠として通用します
  3. 公示価格・基準地価からの推計:近隣の公示地点から概算する方法で、交渉の出発点として使えます

相続人間の見解の差が小さければ査定書で足り、差が大きく代償金が数百万円単位で動くなら鑑定が有効です。鑑定費用は依頼した人が負担するのが原則ですが、合意して遺産から支出することもできます。相続税の債務控除の対象にはなりません。

税理士の評価明細を全員で共有する

相続税の申告では、税理士が土地ごとに「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」を作成します。路線価、地積、各種の補正率、計算過程が記載されており、評価額の根拠が一目でわかります。

この明細を、申告を依頼した相続人だけでなく全員に渡すことをおすすめします。他の相続人が「申告書の評価額は長男に有利に操作されているのではないか」と疑うことが、争いの原因になるためです。計算根拠を公開すれば、少なくとも相続税評価額については疑念が消え、時価との差をどう扱うかという本来の議論に集中できます。

合意の残し方

評価額について合意ができたら、協議書に「本件不動産の価額は金〇〇円と評価して分割した」と記載し、根拠資料(査定書や鑑定書)を添付しておきます。代償金を時価で決めた場合は、相続税の調整計算にもこの記載が使えます。評価額の認識の違いは、資料を揃えて数字で話すことで解決に向かいます。

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。

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