遺産分割協議書を作って相続税の申告も終えた後に、知らなかった預金口座や証券口座、過払いの還付金などが見つかることがあります。そのたびに相続人全員で協議して署名と実印を集めるのは大きな負担です。あらかじめ協議書に「後日判明した財産」の条項を入れておけば、この負担を避けられます。
条項を入れる意味
遺産分割協議は、協議書に記載した財産についてのみ効力があります。記載のない財産は未分割のままなので、金融機関は新たな協議書か全員の同意書を求めます。相続人の一人が遠方に住んでいたり、関係が良くなかったりすると、少額の財産のために手続きが止まることもあります。
条項があれば、その財産は協議書の定めに従って自動的に取得者が決まり、金融機関にも協議書の該当部分を示して手続きできます。
文言例と選び方
取得者を一人に決める書き方が最も使いやすい形です。
「本協議書に記載のない遺産および後日判明した遺産については、すべて相続人甲が取得する。」
法定相続分で分ける書き方もあります。
「本協議書に記載のない遺産が後日判明した場合は、相続人全員が法定相続分の割合で取得する。」
ただし、この場合は不動産なら共有、預金なら各自が払戻しとなり、結局は全員の関与が必要になることがあります。「別途協議する」という定めは、条項を入れない場合と変わりません。
注意したいのは、多額の財産が出てくる可能性がある場合です。「すべて甲が取得する」と書いた後に数千万円の預金が見つかると、他の相続人が「そんなつもりではなかった」と争う原因になります。金額に上限を付ける(例「評価額300万円以下の財産は甲が取得し、これを超える財産は別途協議する」)という工夫も有効です。
相続税の申告との関係
後から財産が見つかった場合、条項で取得者が決まっていても、相続税の申告は別途必要です。申告済みなら取得した人が修正申告を行い、追加の税額と延滞税を納めます。税務調査で指摘される前に自主的に修正申告すれば、過少申告加算税は原則としてかかりません。
申告していなかった方が、追加財産によって基礎控除を超える場合は期限後申告となります。この条項は「手続きの手間を減らす」ためのものであり、申告義務を軽くするものではない点を押さえておいてください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。