交通事故などで亡くなった場合、加害者側から遺族に損害賠償金が支払われます。このお金には相続税も所得税もかかりません。ただし、「亡くなった方自身が生前に持っていた損害賠償請求権」は別で、相続財産として課税されます。この線引きを押さえておく必要があります。
死亡による損害賠償金は非課税
被相続人の死亡に伴って遺族が受け取る損害賠償金は、相続税の課税対象になりません。具体的には次のようなものです。
- 逸失利益(亡くなった方が将来得られたはずの収入に相当する賠償)
- 死亡慰謝料(本人分・遺族固有分)
- 葬儀費用相当の賠償
法律上は逸失利益や本人の慰謝料を相続人が相続して請求する形をとりますが、相続税の取扱いでは、これらは遺族の心身や生活に対する損害の補償とみて課税しないことになっています。所得税でも損害賠償金は非課税所得です。
たとえば加害者側の保険会社から逸失利益4,000万円、慰謝料2,500万円の合計6,500万円が支払われても、相続税の申告書に記載する必要はなく、遺族の確定申告も不要です。
生前に受けた損害の賠償請求権は相続財産
一方、亡くなった方が生前に損害を受けていて、その賠償を受け取る前に亡くなった場合は扱いが変わります。事故で入院している間に示談が成立し、治療費や休業損害、入院慰謝料の支払いを受ける前に亡くなったようなケースです。この賠償請求権は本人の財産として存在していたものなので、本来の相続財産として相続税の課税対象になります。
| 場面 | 性質 | 相続税 |
|---|---|---|
| 死亡によって生じた損害(逸失利益・死亡慰謝料) | 遺族への補償 | 非課税 |
| 生前の損害(治療費・休業損害・傷害慰謝料)で未受領のもの | 本人の債権 | 課税(本来の相続財産) |
事故から死亡まで期間があり、傷害部分と死亡部分が1つの示談でまとめて支払われる場合は、保険会社の損害計算書で内訳を確認し、生前の損害に当たる部分だけを相続財産に計上します。
実務上の注意点
- 示談の成立が申告期限(10か月)より後になることが多く、その時点で賠償額が確定していない場合は、見込額で計上するか、確定後に修正申告・更正の請求で調整します
- 自分の契約の傷害保険や搭乗者傷害保険からの死亡保険金は賠償金ではなく「保険金」で、相続税の課税対象です
- 相続放棄をしても遺族固有の慰謝料は請求できますが、相続財産である賠償請求権は放棄すると請求できなくなります
事故が原因の相続は、保険金・賠償金・医療費の精算が入り交じります。保険会社の損害計算書と支払明細を揃えて、項目ごとに分けて整理してください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。