「全財産を長男に」という遺言で相続税を申告した後、次男から遺留分侵害額請求を受けて金銭を支払った。この場合、長男が納めた相続税は払いすぎになり、次男には新たに申告義務が生じます。この記事では両者の手続きを順に解説します。
2019年改正後の遺留分は「金銭債権」
2019年7月以降に開始した相続では、遺留分の請求は「遺留分侵害額請求」として、侵害された額に相当する金銭の支払いを求める権利になりました。以前のように不動産が共有になることはなく、原則として金銭で解決します。
請求は、相続の開始と遺留分の侵害を知った時から1年以内(相続開始から10年で消滅)に行います。相手に内容証明郵便で意思表示をし、金額は当事者の話し合いや調停・訴訟で決まります。
支払った側の手続き:更正の請求
遺留分侵害額として金銭を支払った人は、その分だけ相続で取得した財産が減ったことになります。手続きは次のとおりです。
- 支払う金額が確定する(合意書の作成、調停の成立、判決の確定)
- 確定した日の翌日から4か月以内に、税務署へ相続税の更正の請求書を提出する
- 添付書類は合意書・調停調書・判決書の写しと、支払いを証明する振込記録など
- 課税価格から支払額を差し引いて税額を再計算し、還付を受ける
例えば長男が2億円の財産を取得して相続税を納め、次男に5,000万円を支払った場合、長男の課税価格は1億5,000万円に減り、差額分の税額が還付されます。4か月を過ぎると更正の請求ができなくなるため、合意書の日付を基準に期限を管理してください。
受け取った側の手続き:修正申告・期限後申告
遺留分侵害額を受け取った人は、その金額を相続によって取得したものとして相続税の申告をします。
- すでに申告していた人は修正申告
- 申告していなかった人は期限後申告(この場合、通常の無申告加算税や延滞税は課されない扱いとされている)
- 提出期限の定めはないが、税務署は支払った側の更正の請求を処理する際に受け取った側の申告状況を確認するため、同時に行うのが実務的
受け取った側が申告しないまま放置すると、税務署から更正・決定を受けることになります。
不動産で支払うときの落とし穴
金銭ではなく不動産を渡して遺留分侵害額を精算する場合、それは金銭債務の代物弁済となります。渡した側には不動産を時価で譲渡したものとして譲渡所得税が課され、受け取った側は時価で取得したことになり、不動産取得税や登録免許税もかかります。遺留分の精算を不動産で行う場合は、税負担を事前に試算した上で合意書の内容を決めることが大切です。遺留分の争いと税の手続きが絡む場合は無料相談でご相談ください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。