父が亡くなり、相続人である母が重い認知症というケースは珍しくありません。母の代わりに子が協議書に署名しても、その協議は無効です。この記事では、認知症の相続人がいるときの申告の段取りを時系列で整理します。
まず成年後見人の選任を申し立てる
判断能力が不十分な人が相続人にいる場合、遺産分割協議にはその人の成年後見人が参加します。後見人の選任は家庭裁判所に申し立てます。
- 本人の住所地の家庭裁判所に申立書、診断書、本人の戸籍・住民票、財産目録、親族関係図などを提出する
- 裁判所が本人の調査・親族への意向照会を行い、必要なら医師の鑑定を実施する
- 申立てから選任まで2〜4か月程度が目安とされるが、事案により前後する
- 後見人が子(相続人)なら、遺産分割では利益相反となり、特別代理人か後見監督人が協議に参加する
注意したいのは、後見人は相続手続きが終わっても辞められないことです。本人が亡くなるまで財産管理と家庭裁判所への報告が続きます。この負担を考えて申立てをためらう家庭も多いですが、後見人なしでは協議が成立しません。
期限に間に合わないときは未分割で申告する
後見人の選任や協議が申告期限(10か月)に間に合わないときは、法定相続分で分けたと仮定して申告・納税します。このとき忘れてはならないのが「申告期限後3年以内の分割見込書」の添付です。
- 配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例は、未分割のままでは使えない
- 見込書を出しておけば、3年以内に分割が成立したときに特例を適用して更正の請求(分割成立の翌日から4か月以内)ができる
- 見込書を出し忘れると、後から分割しても特例が使えなくなるおそれがある
例えば遺産1億円、相続人が母と子2人の場合、未分割申告では母5,000万円、子2,500万円ずつで税額を計算し、母の分も含めて納税します。分割成立後に母が自宅を取得して配偶者の税額軽減を使えば、母の相続税は還付されます。
後見人が参加する協議で注意すること
家庭裁判所の監督下にある後見人は、本人の法定相続分を確保する内容でなければ協議に応じにくいのが実情です。「母はどうせ施設にいるから、子がすべて相続する」という協議は通りません。二次相続の税額を減らしたくても、本人の利益を優先した分け方が前提になります。
また、本人名義で取得した財産は後見人が管理し、家族が自由に使うことはできなくなります。これらを踏まえた分け方と申告の組み立ては専門的な判断が必要です。無料相談で段取りをご確認ください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。