祖父が亡くなり、父がその相続をどうするか決めないまま3か月以内に亡くなった。この場合、父が持っていた「承認するか放棄するか」を選ぶ権利は子に引き継がれます。これを再転相続といいます。数次相続と似ていますが、熟慮期間の扱いに特徴があります。この記事ではその仕組みと税務を解説します。
再転相続とは
再転相続は、第1の相続(祖父)について相続人(父)が承認も放棄もしないうちに死亡し、第2の相続(父)の相続人(子)が第1の相続の承認・放棄の権利も引き継ぐ状態です。父が祖父の相続を承認した後に亡くなった場合は通常の数次相続で、再転相続ではありません。
熟慮期間については、民法916条が「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から」3か月と定めています。2019年の最高裁判決により、この起算点は、子が「父の相続が開始したこと」を知った時ではなく、「父が祖父の相続人であり、自分がその地位を引き継いだこと」を知った時と解釈されています。祖父に借金があったことを後から知った場合に重要になる判断です。
放棄の組み合わせ
子は祖父の相続と父の相続のそれぞれについて承認・放棄を選べますが、組み合わせには制限があります。
| 祖父の相続 | 父の相続 | 可否 |
|---|---|---|
| 承認 | 承認 | 可 |
| 放棄 | 承認 | 可(祖父の借金だけ切り離せる) |
| 放棄 | 放棄 | 可 |
| 承認 | 放棄 | 不可(父の相続を放棄すると祖父の相続についての権利も失う) |
祖父に多額の借金があり、父には財産があるなら、「祖父の相続は放棄、父の相続は承認」を選びます。ただし、先に父の相続を放棄してしまうと祖父の相続に関する権利も失うため、手続きの順番に注意が必要です。
相続税の申告
再転相続で祖父の相続を承認した場合、相続税の申告は数次相続と同じ考え方です。
- 祖父の相続について、父を相続人とした申告書を作成する。父の取得分は父の相続人(子など)が承継し、申告書第1表の付表1に記載する
- 子が祖父の相続について申告する期限は、父の死亡を知った日の翌日から10か月
- 父の相続についても、父の死亡を知った日の翌日から10か月以内に申告する。父の財産には、祖父から承継した財産を含める
- 祖父の相続で納めた相続税は、父の相続で相次相続控除の対象になる
祖父の相続を放棄した場合、父が祖父から取得する財産はなく、祖父の相続についての申告は不要です(他の相続人が申告します)。
承認・放棄の判断は祖父の財産と借金、父の財産の調査が前提になります。3か月の期限は家庭裁判所に伸長を申し立てることもできるので、間に合わないときは早めに申立てを検討してください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。