相続人の中に判断能力のない人や未成年者がいると、本人は遺産分割協議に参加できません。代わりに協議する人を立てる必要がありますが、その人自身も相続人であることが多く、「利益相反」という壁にぶつかります。この記事では代理人の立て方と申告実務を解説します。
誰が本人の代わりに協議するか
| 相続人の状況 | 通常の代理人 | 代理人も相続人のとき |
|---|---|---|
| 成年被後見人(認知症など) | 成年後見人 | 後見監督人がいれば監督人、いなければ特別代理人 |
| 未成年者 | 親権者 | 特別代理人(子ごとに1人ずつ) |
典型例は、父が亡くなり相続人が母と未成年の子の場合です。母は自分も相続人なので、子を代理して協議すると「母の取り分を増やし、子の取り分を減らす」ことができてしまいます。このため家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てます。子が2人なら、それぞれに別の特別代理人が必要です。祖父母や叔父叔母など利害関係のない親族を候補にするのが一般的です。
特別代理人の選任手続き
- 子の住所地の家庭裁判所に申立書を提出する。申立人は親権者または利害関係人
- 添付書類は子と親権者の戸籍、特別代理人候補者の住民票、遺産分割協議書の案
- 裁判所は協議書案を審査する。未成年者の取り分が法定相続分を大きく下回る内容は認められにくい
- 選任の審判が出たら、特別代理人が協議書に署名押印する
申立てから選任まで1か月程度が目安です。協議書案を添付する必要があるため、財産の調査と評価を先に終えておく必要があります。
成年後見人の場合も同様で、後見人が相続人なら後見監督人か特別代理人を立てます。家庭裁判所は被後見人の利益を重視するため、「母がすべて相続し、被後見人の取り分はゼロ」という協議は原則として認められません。
相続税申告書の署名と控除
相続税の申告書には、本人の氏名を記載した上で、法定代理人(成年後見人・親権者・特別代理人)の氏名も記載します。申告書の作成を税理士に依頼する場合、税務代理権限証書は法定代理人が税理士に委任する形で作成します。
税額の面では、未成年者には10万円×(18−年齢)の未成年者控除、成年被後見人には一般的に特別障害者として10万円または20万円×(85−年齢)の障害者控除が使える可能性があります。特別代理人の選任に時間がかかって申告期限が迫っているときは、未分割のまま申告する方法もあります。手順に不安があれば無料相談でご相談ください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。