相続人全員が相続放棄したらどうなる?次順位への連絡・管理義務・保険金の扱い

子が全員放棄すると親、次に兄弟姉妹へ相続権が移り、全員が放棄すれば相続財産清算人の選任が必要になります。2023年の改正で放棄者の管理義務は現に占有する財産に限定されました。放棄しても受け取れる死亡保険金の課税も解説します。

借金が多い相続では、相続人全員が相続放棄を選ぶことがあります。ただし放棄した人の手を離れた財産や債務がどうなるのか、誰に連絡すべきかを知らないと、思わぬトラブルになります。この記事では全員放棄の流れと、税金の扱いを整理します。

放棄すると相続権は次の順位へ移る

相続放棄は、自分が相続人になったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。放棄した人は初めから相続人でなかったものとされるため、相続権は次の順位に移ります。

  1. 配偶者と子(第1順位)が放棄する
  2. 父母・祖父母(第2順位)が相続人になる。この人たちの3か月は「自分が相続人になったことを知った時」から数える
  3. 第2順位も放棄すれば、兄弟姉妹(第3順位)、兄弟姉妹が亡くなっていれば甥姪が相続人になる
  4. 全員が放棄すれば相続人不存在となり、債権者などが相続財産清算人の選任を申し立てる

家庭裁判所から次順位の人へ自動的に通知が行くわけではありません。放棄したことを親族に伝えておかないと、叔父や従兄弟が突然債権者から督促を受けることになります。放棄の申述受理通知書のコピーを添えて連絡するのが親切です。

放棄後の管理義務は「現に占有している財産」だけ

2023年4月施行の民法改正で、放棄した人の義務は「放棄の時に現に占有している財産」を次の相続人や清算人に引き渡すまで保存する義務に整理されました(民法940条)。実家に住んでいない子が、遠方の空き家の管理責任を負い続けるわけではありません。一方、同居していて家財や建物を事実上占有している場合は、引き渡すまで保存義務が残ります。

注意したいのは、放棄前に預金を引き出して使う、不動産を売る、遺産で借金を返すといった処分行為です。これらは単純承認とみなされ、放棄できなくなるおそれがあります。葬儀費用の支出は社会通念上相当な範囲なら問題ないとされますが、領収書を残しておきましょう。

放棄しても受け取れる保険金と相続税

受取人が指定された死亡保険金は受取人固有の財産なので、放棄しても受け取れます。ただし相続税の計算では次のようになります。

  • 保険金は「みなし相続財産」として課税対象に含まれる
  • 放棄した人は非課税枠「500万円×法定相続人の数」を使えない
  • 基礎控除や非課税枠を計算するときの「法定相続人の数」には放棄者も含める
  • 放棄者が一親等の血族や配偶者なら2割加算はされない

例えば子2人が全員放棄し、長男が3,000万円の保険金を受け取った場合、基礎控除は3,000万円+600万円×2人=4,200万円で、保険金だけなら申告不要です。保険金が多額なら申告が必要なこともあるため、相続税シミュレーションで確認してください。

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。

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