夫の給与を妻の口座に移して家計を管理する家庭は多く、それ自体に贈与税がかかることは通常ありません。しかし、生活費として渡したお金が妻名義の預金や投資に積み上がると、「誰の財産か」が問題になります。相続のときに表面化しやすい論点です。
生活費のやり取りは非課税
夫婦や親子などの扶養義務者の間で、生活費や教育費として通常必要なものを渡す場合、贈与税はかかりません。毎月の生活費を妻の口座に振り込む、食費や光熱費を妻のカードで払う、といった行為は非課税です。
ただし非課税なのは「生活費として使われる」ことが前提です。渡した生活費が余って妻名義の定期預金や株式になった場合、その部分は生活費ではないため、贈与か夫の財産(名義預金)かのどちらかになります。
へそくりは誰の財産か
夫の収入から妻がやりくりして貯めたお金(へそくり)は、贈与契約がない限り夫の財産のままです。妻名義の口座にあっても、夫の相続では夫の相続財産として申告が必要です。相続税の調査で妻名義の高額な預金が見つかり、名義預金として課税されるのは典型的なパターンです。
逆に、妻がパートで得た収入を貯めた預金は妻の財産です。口座に夫からの入金分と妻の収入が混ざっていると、相続時に区別が難しくなります。
贈与として妻の財産にするには
夫から妻へ財産を移したいなら、贈与として形を整えます。
- 贈与契約書を作り、年110万円を超えるなら贈与税を申告する
- 妻が自分で管理する口座に振り込み、妻が自由に使える状態にする
- 婚姻20年以上なら、自宅の贈与に2,000万円の配偶者控除を使う
共有名義の不動産で起きるずれ
自宅を夫婦共有で買い、妻の負担額を超える持分を妻名義で登記すると、超えた分は夫から妻への贈与です。例えば5,000万円の自宅を全額夫の資金で買い、持分を2分の1ずつにすると、2,500万円の贈与になります。持分は必ず資金負担の割合で決めてください。
夫婦間の財産の整理は、相続税だけでなく二次相続や配偶者の税額軽減にも関わります。気になる預金がある場合は、早めに専門家へ相談してください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。