個人事業主や経営者が老後資金として使う小規模企業共済・iDeCo(個人型確定拠出年金)・NISAは、相続のときの扱いがそれぞれ異なります。非課税枠が使えるもの、課税口座に移されるもの、請求期限があるものがあり、手続きを知らないと不利になります。
小規模企業共済:死亡退職金として非課税枠あり
加入者が亡くなると、遺族に共済金が支払われます。この共済金は相続税法上の死亡退職金として扱われ、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が適用されます。
受け取れる人の順位は民法の相続順位と異なり、小規模企業共済法で定められています。配偶者が第1順位で、次に加入者の収入で生計を維持していた子・父母などが続きます。遺産分割の対象にはならず、順位に従って請求します。
iDeCo:死亡一時金も死亡退職金扱い
iDeCoの加入者が亡くなると、遺族が死亡一時金を受け取ります。これも死亡退職金として相続税の対象となり、小規模企業共済と合わせて非課税枠を使えます。
- 受取人は加入者があらかじめ指定した人。指定がなければ配偶者、生計を維持されていた子・父母などの順
- 死亡から3年以内に支給が確定したものが相続税の対象。3年を過ぎて確定すると受取人の一時所得になる
- 請求は死亡から5年以内に行う必要があり、放置すると手続きが複雑になります
運用中の資産は死亡時点で売却され現金化されます。
NISA:非課税口座は引き継げない
NISA口座で保有していた株式や投資信託は、死亡日の時価で相続財産として評価されます(上場株式は死亡日の終値など4つの価格の最低値)。
相続人は、自分のNISA口座に引き継ぐことはできず、課税口座(特定口座・一般口座)に移管します。移管時の取得価額は死亡日の時価にリセットされ、生前の含み益には課税されません。移管後に値上がりした分だけが相続人の譲渡益として課税されます。
- 含み損があった場合も、死亡日の時価が取得価額になるため、損失は引き継げません
- 相続の手続きは証券会社で行い、相続人が同じ証券会社に口座を開く必要があります
3つの比較
| 相続税の扱い | 非課税枠 | 主な手続き | |
|---|---|---|---|
| 小規模企業共済 | 死亡退職金 | 500万円×法定相続人 | 共済法の順位で請求 |
| iDeCo | 死亡退職金 | 同上(合算) | 受取人が5年以内に請求 |
| NISA | 通常の有価証券 | なし | 課税口座へ移管 |
経営者の相続では、これらに加えて会社からの死亡退職金もあり、非課税枠は合計で判定します。どの制度に加入しているかを家族が分かるよう、加入先と連絡先を一覧にしておくことをおすすめします。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。