先祖代々の土地を多く持つ「地主」の相続は、財産のほとんどが土地で現金が少ないという特徴があります。土地の評価次第で相続税が大きく変わり、しかもその税金を払う現金がないという二重の問題に直面します。この記事では、地主の相続で典型的に起きる4つの問題と対処法を整理します。
問題1:評価単位の判定で税額が変わる
土地は、登記簿の筆ごとではなく「利用の単位」ごとに評価します。自宅の敷地、貸家の敷地、青空駐車場、他人に貸している土地は、隣り合っていてもそれぞれ別の単位です。逆に、2筆を一体で自宅として使っていれば1つの単位です。
評価単位の取り方によって、間口・奥行の補正や不整形地補正、地積規模の大きな宅地の補正が使えるかどうかが変わります。例えば、1,000㎡を1つの単位として評価すれば地積規模の大きな宅地(三大都市圏なら500㎡以上)の補正で2〜3割の減額になりうる一方、2つに分ければどちらも500㎡未満で補正が使えないといった違いが出ます。土地の数が多いほど、現地確認と利用状況の把握が評価の精度を左右します。
問題2:貸宅地(底地)の整理
借地人に土地を貸している「貸宅地」は、自用地評価額から借地権割合(60〜70%が多い)を引いて評価するため、評価は低めです。しかし、地代収入は低く、売却しようにも借地人以外の買い手が少なく、相続税評価額よりもはるかに安い値段でしか売れないのが実情です。
生前の整理方法としては次のものがあります。
- 借地人に底地を売却する(借地人は完全な所有権を得られるため、第三者より高く買う動機がある)
- 底地と借地権を交換して、それぞれが完全所有権の土地を持つ(固定資産の交換の特例で譲渡税を繰り延べられる場合あり)
- 底地専門の買取業者に売却する
- 相続後の物納の候補として残しておく
問題3:納税資金の不足
土地の評価額の合計が5億円で現金が3,000万円、といった財産構成では、相続税を現金で払えません。申告期限(10か月)までに選択肢を決める必要があります。
| 方法 | 向いているケース |
|---|---|
| 土地の売却 | 売りやすい更地や収益性の低い土地がある |
| 延納 | 賃料収入で分割払いできる(最長20年、利子税あり) |
| 物納 | 売れにくい土地を相続税評価額で納められる |
| 金融機関からの借入 | 賃貸物件の収益で返済できる |
相続した土地を申告期限から3年以内に売れば、払った相続税の一部を取得費に加算して譲渡所得税を減らせます。
問題4:物納の活用
物納は、金銭で納められない場合に土地などを相続税評価額で納める制度です。延納でも納められないことが要件で、境界が確定していない、借地人との契約書がない、抵当権が付いているといった土地は「管理処分不適格財産」として受け付けられません。貸宅地は契約書と地代の支払状況が整っていれば物納できることがあり、市場で売りにくい底地を評価額で納められる点で地主にとって有力な選択肢です。ただし、物納の準備(測量・境界確認)には時間がかかるため、生前に整えておくことが現実的です。
地主の相続は、土地の一覧表を作り、それぞれの利用状況・評価・売却のしやすさを整理することから始まります。相続税シミュレーションで概算を確認し、納税資金の計画を早めに立ててください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。