「確定申告で税金を払ったのに、翌年の国保の通知を見て驚いた」。相続した不動産を売った方からよく聞く話です。結論から書くと、不動産の譲渡所得は所得税・住民税だけでなく、翌年の国民健康保険料・後期高齢者医療保険料・介護保険料の計算にも含まれ、医療費の自己負担や扶養にも影響します。ただし影響は原則として翌年1年だけです。
翌年に来るもの
| 項目 | 影響 | 補足 |
|---|---|---|
| 住民税 | 譲渡所得×5%(長期) | 確定申告をすると翌年6月からの住民税に反映。給与から天引きされる人は普通徴収を選べる |
| 国民健康保険料 | 所得割が上がる | 譲渡所得(特別控除後)が所得に含まれる。市ごとの賦課限度額(年間の上限)がある |
| 後期高齢者医療保険料 | 所得割が上がる | 75歳以上の方。同じく上限あり |
| 介護保険料 | 所得段階が上がる | 65歳以上の方。本人の所得と世帯の住民税の課税状況で段階が決まる |
| 医療費の自己負担割合 | 70歳以上で1割→2割・3割になることがある | 所得の基準は翌年の判定に使われる |
| 高額療養費の区分 | 区分が上がり、月の上限額が増える | 入院を控えている人は時期に注意 |
| 家族の扶養 | 合計所得48万円を超えると税法上の扶養から外れる | 扶養している家族の扶養控除・配偶者控除が翌年使えない |
会社の健康保険に加入している人は、保険料は給与で決まるため、譲渡所得で保険料は上がりません。影響が大きいのは、国民健康保険・後期高齢者医療に加入している自営業の方と年金暮らしの方です。
計算の例
長期の譲渡所得1,000万円が出た年金暮らしの方(大阪市在住、単身)を考えます。所得税・住民税は約203万円です。翌年の国民健康保険料は、所得割の料率が合計で10%前後のため、上限に達しない範囲で100万円近く増える計算になり、介護保険料も最も高い段階に上がります。税金だけを見て「約2割」と思っていると、実際の負担は3割近くになります。
対策
- 特別控除を使い切る:空き家特例や居住用の3,000万円控除で譲渡所得が0になれば、保険料への影響もありません。保険料の計算は特別控除後の所得で行われます
- 取得費を実額で示す:取得費の調べ方で5%を避けるだけで、所得も保険料も下がります
- 売る年を分ける:複数の不動産を売るなら、年をまたいで売ると所得が分散します。ただし取得費加算の3年10か月などの期限を優先します
- 入院・手術の予定と重ねない:高額療養費の区分が上がる年に大きな医療費がかかると負担が増えます
- 家族の扶養は翌年だけ:翌々年にはもとに戻ります。年末調整で扶養の記載を直すのを忘れずに
なお、亡くなった方自身の住民税や保険料の精算は別の話です。亡くなった方の住民税・保険料の精算をご覧ください。
当センターでは、相続税申告のあとに売却を予定している方に、所得税・住民税だけでなく翌年の保険料の見込みまで含めた試算をお渡しし、確定申告もお受けしています。相続税申告の基本報酬は99,000円(税込・遺産総額4,000万円まで)から、初回相談は無料です。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。