「祖父の代から貸している平屋が3軒。家賃は月3万円で、借家人は80代」。大阪市内や阪神間の古い住宅地でよくある相談です。結論から書くと、借家人がいる戸建て貸家は、建物を固定資産税評価額の70%、敷地を貸家建付地として評価します。家賃が安くても減額の割合は変わりません。問題は評価より、「この先どうするか」です。
評価のしかた
- 建物:固定資産税評価額 × 70%(借家権割合30%)。古い平屋なら数十万円になることも多い
- 敷地:自用地評価額 × (1 − 借地権割合 × 30%)。借地権割合60%なら82%。貸家建付地の計算です
- 家賃が相場より著しく低い場合でも、賃貸借契約として成り立っていれば貸家・貸家建付地です。ただし親族に無償や固定資産税程度で貸している場合は使用貸借として自用地評価になります
- 小規模宅地等の特例:貸付事業用宅地として200㎡まで50%の減額。複数の貸家があれば合計で200㎡まで
立退料を払う時期で税務が変わる
| 時期 | 現金 | 評価 | 立退料の扱い |
|---|---|---|---|
| 相続前に払って明け渡し | 減る | 建物・敷地とも自用になり評価は上がる | 亡くなった方の不動産所得の必要経費(建物を取り壊して売るなら譲渡費用) |
| 相続後に払う | 相続人の現金が減る | 相続時点では貸家評価のまま | 相続人の不動産所得の必要経費、または売却のための譲渡費用 |
相続税だけを見れば、立退料は相続後に払うほうが有利です(相続時は貸家評価で安く、立退料は相続財産に影響しない)。一方、売却や建替えの計画があるなら、相続前に明け渡しを済ませておくほうが、相続後の手続きが進みます。
普通借家契約は簡単に終わらない
古い貸家はほとんどが普通借家契約で、貸主からの更新拒絶や解約には「正当事由」が必要です。建物の老朽化だけでは足りず、立退料の提示が正当事由を補う要素になります。相場は家賃の数か月分から数年分まで幅があり、借家人の年齢や転居先の事情で変わります。借家人が亡くなった場合も、同居の家族が借家権を相続します。「いずれ空く」は、当てにできません。
3つの選択肢
- そのまま持つ:評価は低く、家賃は入る。修繕の負担と、いつ空くか分からない不確実さが残る
- 借家人付きで売る:買主は限られ、価格は更地より低い。ただし立退きの手間がない。相続後3年10か月以内の売却なら取得費加算が使える
- 立退き→建替え・売却:時間と立退料がかかるが、土地の価値を活かせる。建替え中の相続は評価と特例の扱いに注意
当センターでは、貸家ごとの評価額・家賃・借家人の状況を一覧にし、相続税と相続後の出口を並べた試算をお渡ししています。相続専門の立場で、売却や建替えを勧める側ではありません。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。