土地活用の提案書には「アパートを建てると相続税が◯◯万円下がります」と書かれています。その数字がどう出ているのかを、一つの例で最初から計算します。結論から書くと、自用地1億円の土地に借入1億円で建てると、土地・建物・借入を合わせた課税対象は約2,000万円になり、建てる前の1億円から約8,000万円下がります。ただし、改正と収支の両方を見なければ判断できません。
前提
- 土地:自用地評価1億円(路線価50万円×200㎡)、借地権割合60%
- 建築費:1億円(全額借入、団信なし)。完成後の固定資産税評価額は5,500万円(建築費の55%)
- 満室で賃貸中。他に預金1億円。相続人は子2人(配偶者なし)
建築前
遺産総額は土地1億円+預金1億円=2億円。基礎控除4,200万円を引いた課税遺産総額1億5,800万円を子2人で按分し、相続税の総額は3,340万円です。
建築後の評価
| 項目 | 計算 | 評価額 |
|---|---|---|
| 敷地(貸家建付地) | 1億円×(1−0.6×0.3) | 8,200万円 |
| 建物(貸家) | 5,500万円×(1−0.3) | 3,850万円 |
| 借入 | 債務控除 | −1億円 |
| 土地・建物・借入の合計 | 2,050万円 | |
| 預金 | 1億円 | |
| 遺産総額 | 1億2,050万円 |
課税遺産総額7,850万円を子2人で按分すると、相続税の総額は1,170万円。建築前との差は2,170万円です。さらに貸付事業用宅地の特例で敷地200㎡が50%減額されれば、敷地は4,100万円になり、相続税は約460万円。差は約2,880万円まで広がります。
令和8年度改正で変わったこと
2027年1月1日以後に取得した貸付用不動産は、相続開始前5年以内であれば時価の8割で評価されます(改正の内容)。上の例で建築から5年以内に相続が起きると、建物の評価は3,850万円ではなく時価(建築費に近い額)の8割、たとえば8,000万円になり、課税対象は大きく戻ります。対策として成り立つのは、5年を超えて持ち続ける前提のときだけです。
数字の裏にある3つの確認点
- 団信の有無:団信付きなら借入は死亡で消え、債務控除はできません。上の例の借入1億円の控除がなくなります
- 30年の収支:家賃収入から返済・固定資産税・修繕・空室損を引いた累計がプラスか。相続税が2,000万円下がっても、30年の収支が赤字なら家族は得をしません
- 預金の残り:建築費を預金で払う場合は、債務控除がない代わりに預金が減ります。評価の下がり方は同じですが、納税資金が残るかを確認します
当センターは、ハウスメーカーや賃貸住宅の建設会社からの依頼で、オーナーの相続税試算と勉強会を行ってきました。建てる・建てない・売る・贈るを同じ表で比べることから始めます。初回相談は無料です。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。