アパートの相続税評価は「貸している」ことを前提に減額されます。では、相続のときに空室があったらどうなるか。結論から書くと、空室の分は減額されません。減額の割合は「賃貸割合」で決まり、空室が多いほど評価は自用地・自用家屋に近づきます。ただし、退去直後で募集中のような一時的な空室は、賃貸中として扱える場合があります。
賃貸割合の計算
- 建物(貸家):固定資産税評価額 × (1 − 借家権割合30% × 賃貸割合)
- 敷地(貸家建付地):自用地評価額 × (1 − 借地権割合 × 30% × 賃貸割合)
- 賃貸割合 = 相続開始時に賃貸している各室の床面積の合計 ÷ 建物全体の各室の床面積の合計
例:10室(各30㎡)のアパートで2室が空室なら、賃貸割合は80%。建物の固定資産税評価額が4,000万円なら、4,000万円×(1−0.3×0.8)=3,040万円。満室なら2,800万円なので、空室2室で240万円評価が上がります。敷地も同様に、借地権割合60%の地域なら減額が18%から14.4%に縮みます。
「一時的な空室」として賃貸中に含められる目安
国税庁の取扱いでは、次のような事情がそろう空室は、賃貸中として賃貸割合に含めてよいとされています。
- その部屋が相続開始前に継続して賃貸されてきた
- 退去後、速やかに新しい入居者の募集を始めている
- 空室の間、他の用途(物置など)に使っていない
- 相続開始後、速やかに新しい賃借人が入居するなど、空室の期間が課税時期の前後1か月程度である
ポイントは「募集していれば何か月でもよい」わけではないことです。裁決・判決では、募集中でも空室が1年前後に及ぶ部屋は賃貸中と認められない例が多く、1か月程度という目安は厳格に見られます。募集の記録(管理会社の募集開始日・広告・内見の記録)を残しておくことが、申告での説明に直結します。
長期空室が多い物件で、相続前にできること
- 賃料を下げてでも埋める:賃貸割合が上がれば評価は下がる。家賃収入も入る
- 用途を変える:空室の多い老朽物件を建て替える・取り壊す、あるいは売却して納税資金に充てる
- 小規模宅地等の特例の確認:貸付事業用宅地の50%減額は、相続開始直前に貸付事業の用に供されていた部分が対象。空室部分の敷地は対象外になり得ます
空室の扱いは、申告での評価額に直接響くうえ、税務調査でも確認されやすい項目です。当センターでは、相続開始時点の入居状況(賃貸借契約書・入金記録・募集記録)を整理したうえで、各室の扱いを決めて評価します。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。