大手の賃貸住宅会社で建てたアパートの多くは、建てた会社やそのグループ会社が一括で借り上げ、オーナーには毎月決まった賃料が入る「サブリース(一括借上げ)」になっています。相続のときの扱いを整理します。結論から書くと、**サブリース物件は、入居者の有無にかかわらず借上げ会社に貸しているので、建物は貸家・敷地は貸家建付地として評価し、賃貸割合は原則100%**です。
評価のしかた
- 借上げ会社との賃貸借契約があり、会社が各室を入居者に転貸している形です。オーナーから見た賃借人は借上げ会社なので、各室が空室でも「賃貸中」になります
- 建物:固定資産税評価額 × 70%(借家権割合30%)
- 敷地:自用地評価額 × (1 − 借地権割合 × 30%)。借地権割合60%の地域なら82%
- 通常のアパートで問題になる空室と賃貸割合の論点は、サブリースでは基本的に生じません。ただし、契約上「免責期間」や「募集期間中は賃料が発生しない」部分がある場合、その室の扱いを契約書で確認します
小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地)
借上げ会社への賃貸も「貸付事業」なので、敷地200㎡まで50%の減額の対象になります。相続開始前3年以内に貸付を始めた物件は原則対象外ですが、3年ルールの例外(事業的規模で貸付を続けてきた場合)があります。相続人が申告期限まで物件を持ち、貸付を続けることが要件です。
契約の引継ぎで確認すること
- 契約の地位の承継:オーナーの死亡で契約は終了せず、相続人が貸主の地位を引き継ぎます。借上げ会社に死亡の連絡と、遺産分割後の名義変更(振込先の変更)が必要です
- 賃料改定の条項:サブリースの賃料は、2年ごとなど定期的に見直す条項が一般的です。相続を機に減額の打診が来ることがあります。相続税の試算では、現在の賃料ではなく改定後の見込みで収支を見ます
- 解約の条項:オーナー側からの解約には予告期間や違約金が定められていることが多く、借上げ会社側からの解約も契約で可能です。売却を考える場合は、契約が付いたまま売るか、解約して売るかで価格が変わります
- 原状回復・修繕の負担区分:大規模修繕をオーナー負担とする契約が多く、相続後に修繕の請求が来ることがあります。修繕積立の有無を確認します
相続税の試算で見ているところ
サブリースは、空室があっても賃料が入る安心感がある一方、賃料は相場より低く設定され、改定で下がっていきます。相続税の計算は簡単ですが、相続後の収支は「改定後の賃料−借入返済−修繕」で見なければ、物件を引き継ぐ相続人の判断を誤ります。当センターでは、建設会社からの依頼でオーナーの相続税試算を行ってきた経験から、評価額と収支の両方を一覧にしてお渡ししています。売る・貸す・建てる・贈る・遺すの比較もあわせてご覧ください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。