社長の土地建物を会社に貸している場合、家賃・地代の額は社長が自由に決められるように見えますが、相場から外れると法人税・所得税・相続税の三方向で問題になります。結論から書くと、相場より高い家賃は役員給与、安すぎる家賃は使用貸借と扱われ、相続税の減額が消えます。「固定資産税の2〜3倍の地代」「近隣相場の家賃」が目安です。
家賃・地代が高すぎる場合
会社が社長に相場を超える家賃を払うと、超える部分は不動産の対価ではなく役員給与と見られます。
- 会社:定期同額給与に当たらないため損金に入らず、法人税が増える
- 社長:不動産所得ではなく給与所得として課税
- 相続税:家賃として社長の財産が増える速さは変わらないので、節税にならない
「会社の利益を社長に移したい」という目的なら、役員報酬の増額として正面から決議したほうが安全です。
家賃・地代が安すぎる場合
社長が会社に無償・低額で貸すと、会社は本来の賃料との差額を受贈益として益金にしますが、同額の支払賃料が損金になるため、法人税の実質的な負担は生じません。影響が出るのは相続税のほうです。
| 社長が受け取る賃料 | 土地の相続税評価 | 小規模宅地等の特例 |
|---|---|---|
| 無償、固定資産税程度 | 使用貸借として自用地100% | 対象外(有償貸付でない) |
| 固定資産税の2〜3倍以上(通常の地代)+無償返還の届出 | 自用地の80% | 特定同族会社事業用宅地等の対象になり得る |
| 建物を無償で貸す | 貸家の30%減なし、土地の貸家建付地の減額なし | 対象外 |
地代が安すぎる底地は親族間でも同じ扱いですが、同族会社では特定同族会社事業用宅地等(400㎡まで80%減額)が使えるかどうかに直結するため、差が大きくなります。自用地評価額1億円の土地なら、無償なら1億円、適正な地代なら8,000万円×20%=1,600万円です。
適正賃料の決め方
- 建物の家賃:近隣の賃貸事例(不動産業者の査定書)、必要なら不動産鑑定。事業用建物は固定資産税評価額ベースの利回りも参考にする
- 土地の地代:固定資産税・都市計画税の2〜3倍程度が一つの目安。更地価額の年6%なら相当の地代で、80%評価の根拠になる
- 根拠を残す:賃貸借契約書、査定書、取締役会・株主総会の議事録、口座振込の記録
- 数年ごとに見直す:固定資産税や周辺相場が動けば改定する
社長が会社に渡す側(社宅)の場合は逆に、役員社宅の賃貸料相当額を下回ると給与課税になります(会社名義の社長の自宅)。
相続税評価と見直しの手順
評価は相続開始時点の実際の契約と支払いで判断されるため、口頭の約束や帳簿上の未払いでは認められにくいものです。無償返還の届出・地代・契約書の整理は、株式評価(会社側の借地権20%の計上)にも関わります。見直しは、契約書を作り直し、改定後の賃料を口座振込に変えるところからです。当センターでは、現在の賃料で相続税評価がどうなるか、改定した場合にどれだけ下がるかを試算しています。相続税申告は基本報酬99,000円(税込・遺産総額4,000万円まで)から、非上場株式の評価は1社110,000円(税込)から、初回のご相談は無料です。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。