社長の自宅を会社名義で建て、役員社宅として住んでいる例は少なくありません。所得税の面では有利ですが、相続のときに思わぬ差が出ます。結論から書くと、会社名義の自宅は社長の財産ではなく会社の財産なので、株式の評価に土地建物がそのまま入り、330㎡まで80%減額できる特定居住用の小規模宅地等の特例は使えません。
社宅は株式の純資産価額に入る
会社が所有する社宅は、純資産価額方式で次のように評価されます。
- 土地:会社が自分で使っているので自用地(路線価方式・倍率方式)。貸家建付地の減額はありません
- 建物:固定資産税評価額。貸家の30%減もありません
- 取得・新築後3年以内なら時価(取得価額ベース)
- 帳簿価額との差額(含み益)の37%は控除
個人名義なら、同居の配偶者や子が取得すると330㎡まで80%減額できます。自用地評価額6,000万円の土地なら、個人名義で1,200万円、会社名義なら株式の中で6,000万円(含み益の37%控除は別)という差になります。社長が100%株主なら、この差がほぼそのまま相続財産の差です。
社宅家賃の適正額
役員が社宅に住むときは、会社に「賃貸料相当額」以上の家賃を払わないと、差額が給与として課税されます。
| 住宅の区分 | 月額の賃貸料相当額 |
|---|---|
| 小規模住宅(木造132㎡以下、その他99㎡以下) | 建物の固定資産税課税標準額×0.2%+12円×床面積㎡÷3.3+敷地の課税標準額×0.22% |
| 小規模でない自社所有の住宅 | (建物の課税標準額×12%〔木造以外は10%〕+敷地の課税標準額×6%)÷12 |
| 豪華社宅(床面積240㎡超などで個別判断) | 一般の相場家賃 |
小規模住宅に当たれば、家賃は月数万円で済むことが多く、これが社宅の所得税上の利点です。家賃を取っていない場合、役員給与の扱いになり、定期同額給与に当たらない部分は損金に入りません。
相続後に遺族が住み続ける場合
社長が亡くなると、社宅の根拠だった役員の地位がなくなります。遺族が役員・従業員でなければ社宅の計算は使えず、会社から相場並みの家賃で借りる賃貸借契約が必要です。無償で住み続けると、会社から遺族への経済的利益として法人から個人への贈与(所得税の課税)の問題になります。配偶者が役員に就任して社宅を続ける方法もありますが、実際に職務があることが前提です。
個人名義に戻すときの税金
- 会社から相続人が時価で買い取る:会社に売却益(簿価との差)、建物には消費税。買う側に登録免許税・不動産取得税
- 役員退職金の現物支給として渡す:退職所得として課税され、会社は時価で譲渡したものとして損益を計上
戻した後は個人の自宅として、次の相続で小規模宅地等の特例が使えるようになります。社長の生前に戻すか、会社名義のまま株式として承継するかは、株価全体と家族の住まいの予定で決めます。当センターでは、社宅を含む株式の評価と個人の財産をあわせて相続税を試算しています。相続税申告は基本報酬99,000円(税込・遺産総額4,000万円まで)から、非上場株式の評価は1社110,000円(税込)から、初回のご相談は無料です。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。