高齢になって自分では耕さず、近所の農家や農地バンクに貸していた農地を相続するケースが増えています。結論から書くと、農地中間管理機構を通じた特定貸付けなら、貸したままで相続人も納税猶予を受けられます。個人に農地法の許可を得て貸している農地は耕作権を差し引いて評価し、許可のない「ヤミ小作」は減額も猶予もできず、貸し方を整理するところから始まります。
貸し方で結果が分かれる
| 貸し方 | 相続税評価 | 納税猶予 |
|---|---|---|
| 農地中間管理機構(農地バンク)への特定貸付け | 賃借権の残存期間に応じた減額 | 相続人が貸付けを続ければ適用可 |
| 都市農地貸借法による認定貸付け(生産緑地) | 同上 | 同上 |
| 個人への賃貸借(農地法3条の許可あり) | 自用地価額−耕作権の価額 | 原則不可 |
| 口約束の貸付け(許可なし) | 減額なし | 不可 |
特定貸付けなら猶予が続く
納税猶予は本来「自分で農業を営む」ことが要件ですが、農業経営基盤強化促進法や農地中間管理事業による貸付け(特定貸付け)は例外です。亡くなった方が特定貸付けをしていた農地は、相続人が貸付けを引き継ぐことで、自分で耕作しなくても納税猶予を受けられます。猶予を受けた後に新たに特定貸付けをする場合も、貸し付けた日から2か月以内に届け出れば猶予が続きます(継続届出と特定貸付け)。生産緑地は、都市農地貸借法の認定事業計画に基づく貸付けが同じ扱いです。
農地バンクへの貸付けは農地法3条の許可を個別に取る必要がなく、賃料も機構を通じて受け取ります。相続では、機構との契約書と賃料の入金記録を揃えておくと、評価と猶予の両方の資料になります。
個人に貸している農地の評価
農地法3条の許可を受けた賃貸借がある農地は「耕作権の目的となっている農地」として、自用地としての価額から耕作権の価額を差し引きます。耕作権割合は、純農地・中間農地が50%、市街地周辺農地・市街地農地は国税局が定める割合(財産評価基準書に記載)です。純農地で自用地価額300万円なら、評価は150万円です。借り手側には同額の耕作権が財産として計上されます。
一方、農業経営基盤強化促進法による利用権設定や農地バンク経由の賃借権は、期間満了で確実に戻るため、残存期間に応じた小さい割合の減額にとどまります。「貸している」だけで一律に半分になるわけではありません。
許可を受けずに口約束で貸している「ヤミ小作」の農地は、農地法上の賃借権として保護されないため、耕作権の控除は認められず、自用地として評価します。長年耕してもらっている相手に対しては、農地バンクを通じた貸付けに切り替える、農地法3条の許可を取って正式な賃貸借にする、といった整理が必要です。納税猶予を受けたいなら申告期限までに特定貸付けに切り替えて届け出る必要があり、時間がかかります。
相続人の手続き
- 農業委員会への相続の届出(10か月以内。届出の手続き)
- 貸付けの契約書・利用権設定の通知・機構との契約の確認と名義変更
- 賃料の受取口座の変更。相続後の賃料は相続人の不動産所得として申告
- 納税猶予を受けるなら、農業委員会の証明と担保の準備(納税猶予の要件)
当センターでは、貸している農地も含めて土地の一覧と評価、相続税の試算を行います。相続税申告は基本報酬99,000円(税込・遺産総額4,000万円まで)から、土地評価は1か所110,000円(税込)から、初回相談は無料です。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。