相続税の税務調査には「季節」があります。税務署の事務年度は7月1日に始まり、7月の人事異動のあと8〜9月に調査先を選んで準備し、10月から12月にかけて実地調査が集中します。年明けは所得税の確定申告で手が回らず、4〜6月に残りを片付けて事務年度が終わる、という流れです。申告書を出してから1〜2年後の秋に電話が来るのはこのためで、2024年秋〜2025年春に申告した方は、ちょうど今が調査の連絡が来やすい時期です。
調査の対象になりやすい申告
国税庁が公表した令和6事務年度の調査の状況では、実地調査9,512件のうち82.3%で申告漏れが見つかり、追徴税額は1件あたり約867万円でした。調査に入られやすいのは次のような申告です。
- 預貯金の動きに比べて相続財産の現金・預金が少ない(亡くなる前の多額の引き出し)
- 子や孫の名義の預金・証券口座があり、贈与の記録が無い(名義預金)
- 生命保険の支払調書と申告書の保険金が合わない
- 税理士に頼まず自分で申告した、または書面添付が無い
- 遺産総額が大きい、海外に財産や送金がある
税務署は金融機関に照会をかけて、亡くなった方と家族の口座の過去数年〜10年分の入出金を調べてから来ます。「見つからないだろう」はほぼ通用しません。
調査の連絡(事前通知)が来たら最初にすること5つ
- 税理士に連絡する。申告を頼んだ税理士がいればその税理士へ。自分で申告した方も、調査の前に相続専門の税理士に相談して立ち会いを頼めます
- 日程を調整する。事前通知の日程は相談できます。資料を揃える時間を取ってください
- 通帳と証券の記録を自分で見直す。亡くなる前5年ほどの入出金で、50万円以上の出金の使い道を説明できるようにします
- 家族名義の口座を確認する。相続人・孫の口座で、亡くなった方が入金していたものがあれば、申告に入れたかどうかを確かめます
- 当日の対応を決める。調査は通常、午前10時から亡くなった方の自宅で、調査官2人で行われます。聞かれたことに事実だけを答え、分からないことは「確認して回答します」で構いません。事前通知のあとに準備する資料は別の記事にまとめています
連絡が来る前なら、加算税なしで直せる
申告漏れに自分で気づいたら、調査の連絡が来る前に修正申告をすれば過少申告加算税はかかりません(延滞税だけです)。調査の事前通知を受けたあとに修正すると、更正を予知する前でも5%(50万円を超える部分は10%)、調査で指摘されてからだと10%(同15%)の加算税がかかります。「あの預金、入れ忘れたかもしれない」という心当たりがあるなら、秋の今のうちに見直す方が確実に安く済みます。
当センターでは、他の事務所や自分で申告した方の申告書の見直し(セカンドオピニオン)と、調査の立ち会いをお受けしています。申告書の控えと通帳をお持ちいただければ、調査で指摘されやすい点を事前にお伝えします。相続税の税務調査の流れと対策もあわせてご覧ください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。