「築30年のアパートの外壁と屋上防水をそろそろやりたい。相続の前にやったほうが得か」。不動産オーナーの勉強会でよく出る質問です。結論から書くと、通常の修繕は相続の前に行うほうが相続税の面では有利です。現金が減る一方、建物の相続税評価(固定資産税評価額)は修繕では原則上がらないからです。ただし、増築や設備の大幅な更新は扱いが違います。
修繕で評価が上がらない理由
建物の相続税評価は固定資産税評価額がもとになります。固定資産税評価額は建物の構造・床面積・経過年数で決まり、外壁塗装・屋上防水・給排水管の補修・内装の原状回復のような維持のための修繕では見直されません。たとえば1,500万円の修繕を相続前に行うと、預金1,500万円が減り、建物の評価は変わらない。課税対象が1,500万円減り、相続税率30%なら450万円の差になります。
資本的支出は別
- 増築、間取りの変更、エレベーターの新設など、建物の価値や耐用年数を高める工事(資本的支出)は、固定資産税評価が見直されて評価が上がることがあります
- 所得税でも、修繕費は支出した年の必要経費、資本的支出は減価償却で数年〜数十年に分けて経費になります。修繕費と資本的支出の区分は税務調査でも見られる項目です
- 相続税の面では、資本的支出でも「支出した現金」より「上がる評価額」のほうが小さいことが多く、課税対象は減ります。ただし効果は修繕費ほど大きくありません
所得税との関係
修繕費は、亡くなった方の不動産所得の必要経費です。相続前に多額の修繕費を払うと、その年の所得が赤字になり、給与や年金との損益通算で所得税が戻ることがあります(土地の借入利子の部分は通算できません)。相続後に相続人が修繕した場合は、相続人の必要経費です。どちらの年の経費にするかで、所得税の効果が変わります。
気をつけること
- 相続の直前に、必要のない工事をまとめて行うのは、効果の説明がつかず、税務調査で問題にされることがあります。修繕計画・見積書・工事の必要性(劣化診断)を残しておきます
- 工事中に相続が起きた場合、未払いの工事代金は債務控除、完了していない部分の扱いは建築中の建物の評価と同じ考え方になります
- 借入で修繕すると、借入は債務控除、現金は減らないので、効果は「借入分だけ評価を下げる」形になります。返済の収支をあわせて見ます
- 修繕して空室を埋めることができれば、賃貸割合が上がって評価がさらに下がり、家賃収入も増えます
修繕は、相続税のためだけでなく、物件を引き継ぐ相続人の負担を減らす対策でもあります。当センターでは、修繕計画を含めた相続税の試算をお受けしています。初回相談は無料です。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。