不動産を法人に移す話は多いですが、逆に「会社の建物を社長個人が買い取る」ことが相続税で有利になる場面があります。結論から書くと、社長が建物を買い取って会社に貸す形にすると、建物は貸家、土地は貸家建付地として評価でき、有償で貸せば小規模宅地等の特例の対象にもなります。会社名義のままでは特例が使えないためです。
時価の決め方と会社の売却益
会社から社長への売却も第三者と同じ時価が求められます。建物の時価は次を組み合わせて決めます。
- 不動産鑑定評価
- 再建築価額から経過年数分の減価を引いた額(未償却残高を参考にする)
- 固定資産税評価額を基準にした調整
時価と帳簿価額の差が会社の売却益になり、法人税の対象です。築年数が古く減価償却が進んだ建物なら、差は大きくありません。逆に時価より安く売ると、差額は社長への役員給与(賞与扱いで損金不算入、社長は給与所得)と扱われます(法人から個人への低額譲渡)。
消費税と諸費用
- 会社が課税事業者なら、建物の売却は消費税の課税取引です。土地は非課税なので、建物だけを買い取る場合は代金全体に消費税がかかります
- 社長が賃貸業で課税事業者なら仕入税額控除ができますが、免税事業者なら負担が残ります
- 社長側:登録免許税(固定資産税評価額の2%)、不動産取得税(住宅以外の建物は固定資産税評価額の4%)、売買契約書の印紙税
- 社長の取得費は買い取った代金。以後は減価償却して不動産所得を計算します
買い取った後の相続税評価
社長が建物を持ち、会社に賃貸する形になると、評価が変わります。
| 区分 | 会社名義のとき | 社長名義で会社に賃貸 |
|---|---|---|
| 建物 | 株式の純資産価額に固定資産税評価額で反映 | 貸家:固定資産税評価額×70% |
| 土地(社長所有) | 無償返還の届出で自用地の80%(使用貸借なら100%) | 貸家建付地:自用地×(1-借地権割合×30%) |
借地権割合60%の地域なら、土地は自用地の82%になります。届出による80%とほぼ同じ水準ですが、建物の30%減と、次の特例が加わります。
小規模宅地等の特例が使えるケース
- 会社が本社・工場・店舗として使い、社長が相当の対価で貸している:特定同族会社事業用宅地等として400㎡まで80%減額。取得者が申告期限まで役員で、土地と事業を続けることが要件
- 会社が第三者に転貸している、または社長が直接第三者に貸す:貸付事業用宅地等として200㎡まで50%減額。相続開始前3年以内に貸付を始めた土地は原則対象外(3年ルール)
自用地評価額1億円・400㎡以内の土地が特定同族会社事業用に当たれば、8,200万円×20%=1,640万円です。会社名義のままなら土地の評価減はこの特例の分だけ受けられません。
なお、2027年以後に取得する貸付用の建物は、相続開始前5年以内の取得なら時価の8割で評価する改正の対象になり得るため、社長の年齢と健康状態を踏まえて時期を決めます。当センターでは、買い取り前後の株式評価と土地建物の評価を比べた試算を行っています。相続税申告は基本報酬99,000円(税込・遺産総額4,000万円まで)から、非上場株式の評価は1社110,000円(税込)から、初回相談は無料です。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。