相続した不動産を売って損が出たとき|給与や年金とは損益通算できない、相殺できる例外と申告したほうがよい場合

相続した土地や家を取得費より安く売って損が出ても、給与や年金などの他の所得とは損益通算できません。同じ年に売った他の不動産の譲渡益とは相殺でき、自分が住んでいた家の損失は一定の要件で繰越控除があります。親がバブル期に高値で買った物件で損が出やすい理由と、損でも申告したほうがよい場合を解説します。

「親がバブルの頃に買ったマンションを相続して売ったら、買値より2,000万円も安かった。この損は税金で戻りますか」。結論から書くと、不動産の売却損は、給与・年金・事業など他の所得とは損益通算できず、税金は戻りません。相殺できるのは同じ年の他の不動産の譲渡益だけで、自分が住んでいた家の損失にだけ繰越控除の特例があります。

原則:他の所得とは通算できない

土地・建物の譲渡所得は分離課税で、2004年以降、譲渡損失を給与所得や年金の雑所得から引くことはできません。損が出た年の所得税がその分減ることはなく、翌年に繰り越すこともできません。

相殺できる例外

  1. 同じ年の他の土地・建物の譲渡益:相続した土地を2筆売り、一方が益、他方が損なら、合計で譲渡所得を計算します。長期と短期の間でも相殺できます。複数の不動産を売るなら、損が出る物件と益が出る物件を同じ年に売ると税金が減ります
  2. 自分が住んでいた家の譲渡損失:売却した年の1月1日で所有期間5年超の自宅を売って損が出た場合、買い換えをするか、売却時に住宅ローン残高が残っているなどの要件を満たせば、給与などと損益通算し、引ききれない分を翌年以後3年間繰り越せます。相続した家でも、相続人自身がそこに住んで自宅にしていれば対象になり得ます。親が住んでいた家に相続人が住んでいなかった場合は対象外です

損が出やすい物件

取得費は亡くなった方の購入価格を引き継ぐため、親が高値で買った物件は損になりやすい一方、古くから持つ土地は取得費が低く益になります。

物件の例 取得費 結果
1990年前後に買った分譲マンション・郊外の戸建て 購入価格(建物は減価償却後)が今の相場より高いことが多い 損が出やすい
亡くなった方が数年前に買い換えた家 購入価格が相場と近い 益も損も小さい
祖父の代から持つ土地 不明なら売却額の5% 益が大きい

損が出る物件では、購入時の契約書を探すことが何より大切です。契約書がないと取得費は売却額の5%になり、本当は損なのに益として課税されます。取得費の調べ方を先に確認してください。建物は購入価格から亡くなった方の所有期間の減価償却費を引いた額が取得費になるため、築30年のマンションでは建物部分の取得費がかなり減っている点に注意します。

損でも申告したほうがよい場合

譲渡損失だけなら確定申告の義務はありません。ただし次の場合は申告します。

  • 同じ年に他の不動産の譲渡益があり、相殺する
  • 自宅の譲渡損失の繰越控除を使う(申告が要件)
  • 税務署から「お尋ね」が届いた場合、申告は不要でも損が出た計算の根拠を回答する
  • 医療費控除などで還付申告をする年に、譲渡の内訳書も付けておくと問い合わせが減る

なお、相続税を納めていても、損が出た売却では取得費加算を使う意味はありません(加算しても損が増えるだけで、他の所得からは引けません)。損の見込みなら、親が元気なうちに生前に売るか相続後に売るかを比べる余地もあります。

当センターでは、相続税申告の際に預かった資料から各不動産の取得費を整理し、売ると益になるか損になるかを一覧にしてお渡ししています。譲渡所得の確定申告もお受けし、相続税申告は基本報酬99,000円(税込・遺産総額4,000万円まで)から、初回のご相談は無料です。

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。

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